【33】きっかけは“将来の夢”

 「自分で考えて行動ができない」。「人から許可をもらわないとその次の行動をはじめられない」。
 まさに私がそういう子どもでした。自分で考えて行動したことに対して怒られたくないという気持ちがあり、許可をもらってから行動をすることで怒られないように自分を守っていたのです。
 私がこういう子ども時代を過ごしたのは、自分が行動したことに対してとがめられた経験があるからというわけではありません。自分をこうして守るようになったのは、きっと、大人に褒められたいという気持ちが強すぎたからだと思います。特に外の環境では“優等生でいること”を絶対としていました。外の大人に褒められれば、家族にも褒めてもらえるからです。ですから、宿題を忘れて先生にちょっとでも指摘されるなんてことがあったときには、一日気持ちが沈んでしまうほど完璧を求めてしまっていました。
 そんな自分が変われたきっかけは将来の夢ができたことです。自分の夢に対し、親は大反対でしたから、親に知られないところで動く必要が出てきました。これを機に、夢を実現するために自分で考えて行動をする習慣が身につきはじめ、事前に許可をとらないと行動ができないという殻を破ることに成功したのです。

 さて、ある年の雪国スクールでの出来事です。
 私の班に、年長のAちゃんという子がいました。Aちゃんは、まさに典型的な「許可を求める子」でした。昼食のお弁当を食べているときには「デザートを食べてもいいですか?」と聞いたり、レジャーシートを畳んでバッグにしまうときには「これでしまっていいですか?」とぐちゃぐちゃに畳んだレジャーシートを見せてきたりしました。「○○していいですか?」と逐一質問をするAちゃん。私のように怒られたくないから許可を求めていたわけではなさそうでしたが、こんなに質問をしてくる子と接したのは初めてでした。最初こそ、「いいよ」と伝えていましたが、あまりにも質問の頻度が多かったため、「Aはどう思う?Aがそれでいいって思ったらいいよ」や、「周りの子を見てごらん。みんなはどうしているかな?」などとAちゃん自身が考える時間をとれるような返答に変えてみました。最初は、「う~ん…」と首をかしげて動けないAちゃんでしたが、次第に「じゃあ、○○する」と自分で考えて行動に移せることが少しずつ増えていきました。
 最終日の保護者の方への引き渡しの時。お母さまにAちゃんが少しずつ自分で考えて行動できるようになってきたことをお伝えしたら「え~!?すごい!頑張ったね!!」とギュッとAちゃんを抱きしめていました。きっとお家でもたくさん質問をすることが多いのでしょう。
 質問をされたときに、パッと答えることは簡単なことです。しかし、そこであえて「あなたはどうしたい?」「あなたはそれに対してどう思う?」と質問し返すことで、子どもが自分で考えるきっかけになります。私が今も子どもの頃のように全てにおいて許可を求め続けてしまっていたら、きっとせっかくできた将来の夢も追いかけることなく諦めていただろうし、日常生活においてもっと窮屈な日々を過ごしていたのではないかと思うのです。
 花まる学習会には、教室はもちろん、野外体験、イベントなどを通じて、たくさんのお子さまと出会う機会があります。その一期一会の出会いの中で、目の前の子どもたちがさらに成長できるきっかけとなるような関わり方をこれからも続けてまいります。

 

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