【8】幸せのアナウンス

「朝晩冷え込む季節となっております。どうかご体調、お気をつけてお過ごしください。」

 先日、帰宅するときの電車で流れたアナウンス。到着駅や到着時刻など、必要なことの伝達が終わった後に、この一言が添えられていました。必要あるかないか、やったほうがいいか悪いかと“考え”からくる行動ではなく、心から相手を思う“優しさ”からの一言。寒い季節でも、温かみを感じた帰宅の電車でした。

 今月の小学生クラスの特別授業は年に一度の作文コンテスト。一枚目を書き終えたRちゃんが、私のところに完成した作文を持ってきました。一通り読んで作文の内容について会話をした後、彼女が席に戻るとき「Rちゃんの作文、すごく気持ちが伝わってきたよ。読んでいてワクワクする作文だった!」と伝えたところ、「イエ~イ!!イエイ!イエイ!!」とそんなにうれしいのかと思うくらい飛び跳ねて喜んでいました。私が感じたことを素直に伝えただけでしたが、この一言を伝えた後は、まるでRちゃんの鼻歌が聞こえてくるかのようなルンルンの表情で二枚目も書き始め、結局この日は時間ギリギリまで夢中になって書いていました。
 私がRちゃんに何気なく伝えた一言。褒めようとして褒めたわけではなく、私が感じたことを素直に伝えただけです。それが、こんなにも喜んでもらえるとは思いませんでした。また、その後のRちゃんのやる気が向上した姿を含め、その影響力にとても驚きました。そしてこの出来事から、子どもたちに限らず、相手が幸せになる瞬間というのは、きっと本当の意味で言葉や思いが伝わった時なのかもしれないなと感じました。

 そしてもう一つ。これも授業終了間際のことです。この日も授業終了の挨拶をして「いち早くお迎えに来てくださった保護者の方のところに駆けつけなきゃ!」とあわただしくしていました。ただそんな中でも、「先生~、来週は折り紙を使うの~?」「先生、水筒な~い!」と私や講師に色々話しかける子どもたち。それはそれでかわいいところなのですが、正直「ちょっとまた後で話を聞くから待って!!」というのが私の本音でした。
 しかしこの時、「先生!」「どうしたの?」「…今日も花まる楽しかった~!」年長の男の子Hくんがせかせかする私の前まで来て伝えてくれました。「そっか(笑)、それは良かった。ありがとう。」その瞬間、私はせかせかしつつも、すごく心が温かくなりました。Hくんのこの一言。“たった一言”といってしまえばそれまでかもしれませんが、受け取った私は思わず笑ってしまいましたし、とても幸せな気持ちになりました。

 最近は花まるの教室で、ただただ目の前の子どもたちの幸せと成長を願い、その時感じたことや思ったことを伝えるようにしています。車掌さんや年長のHくんのような相手を幸せにする“一言”。私も相手の心を幸せにする“一言”を周りの人に届けたい。花まるの教室でも子どもたちと保護者の皆さまの心が幸せになれる“一言”をお届けできるよう、日々努めてまいります。

 

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