【137】ガチッ!
先日、担当するアルゴクラブという数理教室の授業準備をしていると、一人のお母さんが向かいの教室に入っていくのが見えました。FCの面談に来た保護者の方でしょう。教室に入る直前、ちらっとしか見えませんでしたが、『あの横顔はKちゃんのお母さんだ!』と思わず教室の扉をノックして入ってしまいました。やはり、昨年度まで花まる教室で担当していたKちゃんのお母さんでした。突然入ってきた私を見て、お母さんは、
「先生、なんでここにいるんですか?」
と目を丸くして驚いていました。
「お久しぶりです!土曜日はここで授業があるんです。Kちゃん元気ですか?」
「思春期の真っただ中で、反抗してばかりですが、元気いっぱいですよ。中学校生活にも慣れてきたみたいで。」
「そうですか。この前、テストを受けに来たKちゃんに会いました。『なんで、ここにいるの?』とお母さんと同じリアクションでしたよ。思春期のKちゃんは、冷たい対応でしたが…」
そんな他愛もない会話をしていると、この春から中学校に進学したKちゃんの近況を話してくださいました。Kちゃんは、陸上部に入部したそうです。部活と勉強を両立させるのは大変なようですが、その合間を縫ってFCに週3回通う日々。中学校の担任の先生は、言葉遣いや生活態度、スケジュールの管理について、耳にタコができるくらい注意されるほど厳しい先生だそうです。
「小学校の先生より厳しくて怖い。」
と家でも漏らすほど。毎朝、慌てて学校の支度をしていると、
「お母さん教科書がない!」
「体操着はどこ?」
「面談の紙、書いてくれた?」
と大慌て。漫画のようにバタバタしながら家を出て行くKちゃんの後ろ姿を玄関から見送る日々が続いているそうです。
「FCの自学室に行ってみたら?」
中学校の定期テストが近づいたある日、お母さんは家での勉強がはかどらないKちゃんに思い切って声をかけました。小学校まではお母さんと一緒に、花まるで立てたスケジュールを見ながら勉強をしていました。しかし、『中学校では自分のことは自分でできるようになってほしい…』と自立に向けての準備をするために思い切って行動に移しました。とは言え、お母さんは、
「一緒にやろうよ。」
とKちゃんが甘えてくると思っていたのですが…、返ってきたのは、
「わかった。」
と一言。拍子抜けした部分もあったようですが、自分の事だからと、それからはFCの自学室に通わせるようになりました。
自学室を出るときに、自宅に電話をする約束をしていました。その電話で、
「もう少し勉強していくね。」
と話すKちゃん。家ではだらだらと過ごしてしまうから、先生と友達しかいない自学室はいつもより集中できるのかもしれません。こんなにも成長するのかとお母さんも驚いていました。しかし、自立の一歩を歩み始めたKちゃんに嬉しく思う反面、急に大人になって自分から離れていくことが寂しかったそうです。お母さんは、花まるでコツコツ取り組んできたことが、小学校から中学校に上がり、環境が変わったことで生きてきたと話していました。
Kちゃんにとって成長のきっかけは、環境の変化や周囲の大人や友達とのかかわり、そして、お母さんのお子様への接し方も関係しているように感じます。タイミングもあったと思いますが、様々なものがかみ合ったときに、子どもたちはぐっと成長していくのでしょう。