【129】一人の時間をもつ
社内で産休・育休セミナーがありました。セミナーでは産休・育休を取得したことのある女性社員の数名が経験談を話したのですが、全員が共通して話していたのは、「どうすれば、自分(=母)が笑顔でいられるのか」を考えることの重要性でした。話を聞くなかで、過去に私の教室に通ってくださっていた二人のお母様の顔が思い浮かびました。
まずは、二人の男の子の母Aさん。長男が1年生のときに入会し、いつも幼い弟をベビーカーに乗せて、電車で教室に来てくださっていた方です。Aさんと面談した際、「長男をきつく叱ってしまう」という話題になったので、どんなときに叱るのか聞くと、「何度言っても、食べ終えたお弁当箱を洗いに出せないとき。」という答えが。当時、まだ独身だった私はその答えにポカンとしてしまいました。しかし、子育て中の今なら、Aさんの気持ちがわかります。私も同じ状況になったら、「お弁当箱を台所のシンクに出すだけのことが、なぜできないの?」「弟も小さくて手がかかるのだから、そのくらい自分でやってよ…!」と、思ってしまうはずです。当時のAさんは仕事と育児で、とても疲れていらっしゃる印象でした。しかし、この数年後、すでに教室を移動されていたAさんに再会した時、驚くほどに穏やかな表情で話しかけてきてくださったのです。近況を聞くと、子どもたちが大きくなって少し手が離れたため、ご主人に子どもたちを預けて一人の時間を確保できるようになったとおっしゃっていました。その時間に、カフェに行ったり、ヨガに行ったりして気分転換をしているのだそうです。ほんの少しでも、自分のためだけに費やせる時間をつくるだけで、こんなにも表情が明るく、穏やかになるのかと、驚きました。
そして、男の子3人の子育てに奮闘していたBさん。当時、花まるに通っていた4年生の長男が反抗期に突入していました。家では年長と年少の弟たちがいつも喧嘩していて、その騒がしさに長男が怒る→3人で大乱闘 の繰り返し。「子どもが寝るまで静かな時間が1分たりともない」とおっしゃっていたのが、当時の私にはかなり衝撃的でした。仕事と育児で毎日大変だけれど、仕事で帰りが遅いご主人には子育てを頼れない。そういう状況で、Bさんは疲れ切っている様子でした。
私はBさんに野外体験の親子企画に、お父さんとお子さんたちで参加することをおすすめしました。Bさんは「たまには一人になりたい」と、ご主人と子どもたちを説得して、野外体験に送り出しました。ご主人と子どもたちが野外体験に行っている間、久しぶりに一人の時間を満喫したBさんは、すごく気持ちが軽くなったそうです。それに加え、Bさんのご主人が野外体験の参加を機に、子育てに積極的に参加するようになったとも聞きました。初めて行った「親子海釣り企画」がとても楽しかったようで、仕事がお休みの日に男4人で釣りに行くようになったそうです。釣りに行ってくれることでBさんが気分転換でき、そのうえ普段忙しいお父さんと子どもたちが交流できる、という素晴らしい家庭内改革が行われたのです。
それから10年が経ち、私も子育てをするようになりました。娘を保育園に預け始め、仕事を再開したばかりの時は、AさんやBさんのように、心も体も疲れてしまうときもありました。そんな時は意識して一人の時間を作らせてもらいました。最近は、娘が習い事をしている間に一人でカフェに行き、本を読むことが息抜きになっています。前述した社内のセミナーでは、祖父母の手を借りたり、幼稚園や保育園の延長保育をうまく利用したりして、自分一人の時間を確保しているという人もいました。
こうして自分が笑顔でいられるための方法をいくつか持っておくことが子育て中には大切だなぁと、今回のセミナーを通してつくづく感じました。時々休みながら、自分の機嫌をうまく操って、これからも子育てに、仕事に、励んでいきたいと思います。