【Rinコラム】『創造力が育つには?』2020年5月

【Rinコラム】『創造力が育つには?』2020年5月

こころと頭を同時に伸ばす 幼児期の子育て 13

「まねっこするのは大歓迎」 。
花まるでは、アートのクラスのみならず、 年中 ・ 年長コースの思考実験でも、そう子どもたちに伝えます。
「おもしろいアイディアがあったら、(先生が教えた通りにこだわりすぎずに)試してもいい」し、逆に「いいなと思ったら、それをまねしてもいい」
なぜなら「あなたというフィルターを通してできたものは、唯一で世界一のものだから」と。
そういうと、ホッとした顔をする子が少なからずいます。
 
「子どもの創造力を育みたい」
「オリジナリティを育てたい」
「自分だけのものを作ってほしい」
という親の願いを感じてしまい、「人の真似をしてはいけないのではないか」と思っている子どももいるな、と感じることがあります。
が、実は、創造力を育てたいと思ったときに、 「真似をしてはいけない」という必要などないのです。
「真似ること」というのは、実はとても大切なことです。

「創造は模倣から始まる」ということばがあります。
「すべての芸術は、自然美を模倣するところから始まった」 。
つまり我々は、先人の気づいてきた作品や業績を真似ることで深く知り、技術を学んできたのです。
どんな分野でも優れたものを見て吸収し、それを真似ることから、創造はスタートします。
その後はじめてオリジナル作品が生まれるのですから、子どもにはどんどん真似をさせてあげてください。
すごいな、と感じること、真似してみたいという気持ちでよく観察すること、そのこと自体が主体的な学びです。

そうです。実際には、自主性がない人には、模倣性は生まれません。
自らの主体性によって、素晴らしいと感じたものをまず模倣し、その後、子どもたちの自主性や主体性は、オリジナリティを創造しようとする創造性に向いていく。
そしてさらに豊かな感性が磨かれていく。子どもたちを見ていていつも思うのは、主体的な学びが奪われない環境であれば、出来上がったものに対して、思い上がった優越感ではなく、健全な誇りを持つものだ、ということです。つまりそれは、自分への自信です。

そもそも人は、自分の存在に誇りを抱くことができると、仲間や優れた人たちに対して共感したり、感謝の感情を感じたりしやすくなり、安心して人を信頼し尊敬することができるようになります。
「これはすばらしい」と思うものを模倣することができるようになるのです。

自ら創造的に生きていく時代に必要な力。
創造力を育てることのおおもとにあるのは、子どもの中に「人を信じる力」を育てるということ。
オリジナリティというのは、健全な自立です。
十分な依存をし、人を信じる力は、感謝や尊敬の感情と結びつくものであり、そのことが本当の意味での「じゆうに、やりたいようにできる 自分=を信じる創造性」につながっていくからなのです。

R i n (井岡由実)


著者|井岡由実(RIN)

井岡由実 国内外での創作・音楽活動や展示を続けながら、 「芸術を通した感性の育成」をテーマに「ARTのとびら」を主宰。教育×ARTの交わるところを世の中に発信し続けている。著書に『こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て』 (実務教育出版)ほか。

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