精神的に成熟した部分を持つ子どもたちは、時にそのアンバランスさから、エネルギーを持て余すことがあります。
「同じであること」を求められる場では特に、もっと知的好奇心を満たしてくれる何かを常に欲しがっている子にとっては、自分を抑え込まなければいけない、我慢しなければいけないことにも直面します。
その苦しいほどの憤りともいうべき、感情の塊のようなものを、まだ幼い彼らがコントロールするのは容易ではありません。感じやすい子は、怒ったり泣いたり、拗ねたり攻撃的になったりと、感情を爆発させることで浄化することもあるでしょう。
大人のように言葉をうまくあやつり、自分のなかの未分化な感情を表現したり、整理したりするすべを持たない彼らにとって、言葉を使わずに表現する手段を持つことは、実はとても有効です。一緒に何かを作ることをとおして、子どもたちは疑似的にこころの葛藤を体現したり昇華したりしていけるからです。
描いたり作ったりすることは、言葉という手段を使わずとも、彼らの内面を表現することを手助けし、確実に何かを浄化していきます。表現とは、内なる自分との対話だからです。
娘が、自分の感情をうまくコントロールできないことに悩んでいたお母さんは、Atelier for KIDsに参加したあと、彼女の描いた絵日記を見せてくれました。そこには、その日クラスで制作した作品の絵とともに、「どんなものができるかかんがえてなかったです。ただたのしみました」と書かれていました。
どうすれば子どもたちが自分と対話し、制作に没頭できるのか。いわゆるアートセラピーのような効果が、子どもたちのこころにもたらされるのか、については、その場にいる大人の見守り方が、大きく影響を及ぼします。
「もっとこうしたら?」「そのやり方はちがうよ」というような大人の勝手な価値観をおしつけたり、「評価」をともなう場では、求められる正解に向かうほかありません。
「あなたはどうしたい?(好きにしていいんだよ)」「それはおもしろいね(好きだよ)」…自分のこころを大事にしてもらえることを幼児期に知っている子は、まわりの人のちがう意見にも、耳を傾けようとするようになります。
今回は「日頃忙しくてストレスを溜めがちな子どもに向けた、アートを通した癒し術、こころのバランスの取り方など教えてください」というアトリエラヂオに寄せられた質問にお答えしてみました。
一人で、ただ黙々と好きなことに熱中する、遊びのような余白時間を普段から持てているのであれば、とても健全です。もしもそばに大人がいるのなら、その子が本当に好きなこと、を見つけてその時間を尊重してあげてくださいね。
お母さん、あなた自身が、好きなことはどんなことですか?
井岡 由実(Rin)
🌸著者|井岡由実(RIN)
国内外での創作・音楽活動や展示を続けながら、 「芸術を通した感性の育成」をテーマに「ARTのとびら」を主宰。教育×ARTの交わるところを世の中に発信し続けている。著書に『こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て』 (実務教育出版)ほか。
「Atelier for KIDs」は、 小さなアーティストたちのための創作ワークショップです。
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