こころと頭を同時に伸ばす 幼児期の子育て 1
まちがいに気づくこと抜きには、学びは始まりません。
まちがえることと学ぶことは、深くつながったひとつのプロセス。
だからこそ、子どもたちが何かをまちがったり、失敗したりしたら、「どうしたらできるようになるだろう?」と、未来に向かっていっしょに考えられれば、可能性は無限に開きます。
反対に、「なんでまちがっちゃったの?」と過去に向かって問い詰めてしまうと、「まちがえることはいけないことだ」「まちがえることは自分の価値を損ねることだ」という印象を持ってしまいます。
次第に子どもたちは、自分をありのままに表現しなくなります。
不安感からまちがえることを隠してしまう子は、未来に向かっていけなくなるのです。
大切なのは、もし失敗したり、まちがったりしても、いつでもそこから「学ぶことができる」ということ。
社会は今のままではありませんし、よい意味で変わっていきます。
社会がどのように変化していっても、自分への信頼を失わずに生きていけるかどうか。
「たくさんまちがったから、頭がよくなるね」と私たちが教室で子どもたちに言うとき、それは「そこから学びがたくさんあるし、そこからどうするか、そのプロセスが、人生では大事だよ」という哲学を伝えているのです。
一人の子どもを育てようと思ったら、新しいことの連続です。
子どもを前にすると、何をどうしたらいいか、ちっとも正解がありません。
その瞬間、どんな判断をして、どんな行動をとるか、予期しないことがどんどん起こります。
私たち大人こそが、「失敗もまちがいもおおいにけっこう。うまくいかなくてもくじける必要なんてないよ。そこからどうするか考えられたら、よりよい未来を自分で創れるのだから」そのような態度を見せ続けてあげることが、必要なのかもしれません。
幼児期の子どもたちは、過去を振り返って反省するのは苦手ですが、未来を見ることは大好きです。
そして経験は、その経験をした人だけのものなのです。
子どもたちが、たくさんまちがいをして、そこから学んでいけますように。
井岡 由実(Rin)
国内外での創作・音楽活動や展示を続けながら、 「芸術を通した感性の育成」をテーマに「ARTのとびら」を主宰。教育×ARTの交わるところを世の中に発信し続けている。著書に『こころと頭を同時に伸ばすAI時代の子育て』 (実務教育出版)ほか。