【90】険しい道は楽しい道!
「先生、我が子が自分の頭で考える力はどうすれば身につきますか?」
「私は母親として何をすればいいですか?」
多くの方が感じる親のジレンマだと思いますが、どうしても、母親として、父親として何をすればいいのか、この「○○として」というところが子育ての難しさだと思います。
以下は今夏サマースクールで4年生女の子が書いた作文です。彼女の作文のなかに子育てにおける心構えのヒントがありました。
「ザザザーゴーゴー」
すごく流れが強い。片手をはなしたら流される。ロープをつかみながら、上へ上へいき、岩もつかんで上へ上へ。
「さすが、リバー探検隊。危険すぎるぅ~」 ぶるぶるとても寒い。そのとき友だちのSちゃんが言った。
「険しいは楽しい!」
楽しいけど、すごく大変だったから言葉を聞いたとき「本当だ!」と思い、それからは、きびしくても、むずかしくてもずっとわたしは「険しい道は楽しい道!」と言っていた。
わたしは、リバー探検隊でやっとわかった。Sちゃんと険しい川がおしえてくれた。本当に険しい道はとっても楽しいということを。
私はこの作文を読んだ今夏、雷にうたれたような衝撃を受けました。
長く花まるで野外体験を行ってきて、彼女にその野外体験の意義、奥深さを教えてもらったのです。同時に命を削るような野外体験という仕事を、子どもたちのためにやってきてよかったと自分も肯定されたような感動も重なりました。
教育上、道徳上、先生たち、大人たちは「苦労、大変な経験をしなさい」「みんな協力し合うことが大事」「つらさの中に喜びがある」なんて言ったりします。そう言っていた自分も少し恥ずかしくなります。言葉だけではなく、実体験で学ぶことがあると実感しました。
彼女は先生、大人ではなく、「自然の川」「友だち」から学んだのです。私は野外体験の意義、奥深さを改めて考えさせられました。
自然の中は常に危険とのとなり合わせです。とくにリバー探検隊は油断をすれば一気に身体事流されてしまいます。「友だちと協力しなさい」なんて言わなくても、協力せざるを得ない環境に身をおかれるのです。つまり自分で、もしくは仲間の力を借りてなんとかしないといけない状況にに放り込まれます。みんなが普段の安心した日常とは違う険しい表情になります。さっきまで部屋で喧嘩していた子どもたちが自然に手を取り合い、声を掛け合います。毎年、その表情を見てきた私には、その険しい表情が、つらそうだというよりそんなときこそキラキラ生命が輝いてみえます。
そして、野外体験というものはお題目ではなく、身体感覚で覚えているので生涯忘れることはありません。この作文を書いた子は、将来乗り越えなければ壁ができたときに「険しい道は楽しい道!」という言葉とともに、川の冷たさ、お互い助け合って手を取り合ったときのぬくもり、皆の「頑張れ~」という声、ゴールに着いたときの爽快感など、そのときの身体感覚で思いだすでしょう。
野外体験がなぜ子どもの教育に必要なのか。
結局、「なんとかしないと」という場でなんとかしようと考えたり感じたりすることが、子どもの頭や心を一番鍛えることになるのだと実感した今夏となりました。
親としてできること、それは「○○として」「○○をさせなきゃ」という気持ちを手放して、いかに不自由な体験をさせるか、そこに尽きるのではないでしょうか。
花まる授業、野外体験では親元を離れ、そんなたくさんの経験ができる場をこれからも提供していきます。