【E12】本気のサムライ合戦
花まる学習会の夏といえばサマースクールが大きなイベントとしてありました。私も毎年楽しみにしており、今年もたくさんの方が参加してくださり子どもたちがたくさん成長しました。
サマースクールにはたくさんのコースがあります。今回、私はそのうちの1つ【サムライの国】というコースの引率をしていました。サムライの国では主に花まるサムライ合戦を行うコースです。スポンジ製の刀と紙風船を用いて、相手の太ももに固定している紙風船を割り天下統一を目指します。花まるグループが生み出したオリジナルスポーツです。子どもも大人も本気になって戦います。ただ戦うだけではなく、「礼に始まり礼で終わる」といった礼儀やルールを守って楽しくサムライ合戦を行います。
軍の中で選ばれた子どもが大将となり、子どもたちだけで声をかけ合って戦いに臨む『子ども大将戦』が行われました。白いマイン(私が担当していた宿)軍は、誰が大将になるか決める時に自ら「大将になりたいです!!」
と立候補したY君。仲間の皆も賛同して、いざ戦いがスタート。3つの軍で戦い、制限時間内の中で奮闘。Y君が
「守備が足りない!」
声をかけると仲間たちもそれに応じて遠くにいる子たちに伝言をしていきます。実はこの子ども大将戦は3泊4日の中で最後の戦いでした。最初は仲間内で声を掛け合うことはなく自由に動いていたのですが、サムライ合戦をするたびに課題に気付き声をかけたり、軍議を行い仲間同士でコミュニケーションを取らないといけないということを考えたりしていました。その結果、彼らは最終戦で仲間同士、助け合いながら戦うことができたのです。
制限時間内に決着がつかず、一騎討ちへと移ります。各大将たちだけで戦う一騎討ち戦。仲間たちも手拍子で大将たちの背中を押します。ここで1軍が倒されてしまい、白いマイン軍のY君と相手が残りました。討ち取った方が天下統一です。合戦上の緊張も最高潮。Y君は隙を見ながら攻撃。「パンッッ!!」紙風船の割れる音がしました。白いマイン軍の勝利かと思いましたが紙風船は割れておらずただ刀が当たっただけでした。その後も両者果敢に攻めていると「パンッッ!」Y君の紙風船が相手によって割られました。悔しい感情をグッとこらえて相手に礼を自らしました。顔を上げて
「ありがとうございました!!」
その後、振り返り仲間のところに戻ると我慢していた涙が溢れ出しました。軍の皆も誰1人とせず責めることなく拍手しながら
「Yよくやった!」「かっこよかったよ!」
たくさんの声が聞こえてきました。私はそれを見て、負けてしまって誰もが悔しいのに責めることをしない光景に感動してしまいました。Y君は皆に
「負けてしまってごめん。ありがとう!」
それを聞くと仲間たちは全力で拍手。夏の熱いサムライ合戦が終わりました。そして何よりも軍の中の絆が深まりました。手を抜いて取り組んでいたら声をかけ合うこともなかったでしょう。そして負けてしまっても拍手で讃える。Y君自身の人間性が良かっただけでなく本気で戦っている姿に皆が心を打たれていたのだと思います。3泊4日の中で感動が生まれました。
今回の舞台は野外体験でしたが、彼らが大人になって社会に出たときのことを考えてみればどうでしょうか。勝ち負けにこだわることも、物凄く大事なことです。しかし勝ち負けだけを意識してしまうと時には不正を起こしてしまうことがあるかもしれません。そんなことをしてしまえば周囲からの信用は間違いなく失うことになります。そんな大人に私はなってほしくありません。だからこそ今どんなことにも本気に取り組む経験をたくさん積むことが重要だと思います。私自身も教室で子どもたちが本気になって授業を受けられるようにまずは大人が本気になっている姿を見せられるように教室運営をして参ります。