【O12】正論の攻撃力
「い ま は え ん ぴ つ を お く ん だ よ!!!」
先生が話始めたときの、年長Mちゃんから同じテーブルに座るYちゃんへの遠慮ない指摘です。周囲の子がMちゃんの方を振り向くほど大きな声。お絵描きをしていたYちゃんは突然のその言葉に肩を縮めて固まりました。斜め下を向いた目には涙が溜まり、決壊寸前です。少し離れたところにいた私はYちゃんに声をかけようと傍によると、Yちゃんはバンとえんぴつを机に叩きつけて走って教室を飛び出していきました。
別の教室にて。
「Y く ん! こ っ ち に き て す わ る ん だ よ!!!」
先生が「あいさつするよ!」と言った後の出来事。着席して挨拶の準備バッチリな年中Sくんが、離れた場所でぼんやりしていたYくんに向かって強く言い放ちました。一音一音区切るように発せられたその言葉はYくんを怯えさせるには十分。その場でじっと立ち尽くし、しばらく着席しようとしませんでした。
教室でこういったことがあったとき、私は子どもと一緒に伝え方を考えます。学年によって伝え方は異なりますが、同じ『こっちにきて座るんだよ』でも言い方によって相手への伝わり方が違いそうだよねということを伝え、気づきを与えます。
両エピソードとも指摘した子が反省したうえで指摘された子に謝り、和解しましたが、正論の攻撃力の高さを再認識するものとなりました。
“先生の話を聞くときはえんぴつをおくこと”も“あいさつをするときは着席をすること”も正しいのです。正しいからこそ言われた側は逃げ場がなくなり、自尊心が傷つけられ、塞ぎこんでしまいます。正論自体の攻撃力が高いゆえに、それを伝える手段である言葉はなるべく優しく。これは教室でも子どもたちに伝えていきたいことの1つです。
花まる学習会で大切にしている“もめごとはこやし”。もめごとを通して得られるものは生涯の宝になると確信しています。