【O15】テストで“ととのう”子どもたち
■テストで“ととのう”子どもたち
皆さま、サウナはお好きですか? 私はたまに温泉施設へ出かけた際、ついでに入る程度です。しかしながら、蒸気に満ちた暑い部屋、ぐっとこらえて汗を出し、水風呂できゅっと身を締めて、外気浴で体が弛緩していくのを感じながら日々のちっぽけな悩みを露天風呂の空に霧散させるあの時間、いわゆる“ととのう”時間がとても好きです。……なぜこんな話を突然したかというと、偶然にも教室で子どもたちが“ととのっている”姿を目撃しましたので、今回はその様子をレポートいたします。
■鉄は熱いうちに打て
先日、小学生クラスでHIT(Hanamaru Intelligence Test)と花まる漢字テストを実施いたしました。3学期ともなると多くの子がテストに慣れ、記名や用紙の回収などの段取りがスムーズに進みます。その結果、テスト終了後、少しだけ時間に余裕が生まれました。私が、
「もうテスト解き終わったから、ポケ漢出してもいいよ~」
とだけ伝えると、子どもたちは一斉にカバンからポケット漢字辞典(通称・ポケ漢)を取り出し、
「あー!!!これじゃん!!!」
「よかった~合ってた~」
とわいわい、ガヤガヤ。誰もが経験したであろう、テスト後特有の、余韻の時間。自分にもこういう時あったな~などと感慨に浸っていると、あることに気付きました。
(あれ…? 普段漢字で書くように促しても頑なに拒否するYくんまで食い入るように漢字辞典を見ている…。)
(というか、もう心当たりは確認し終えただろうに、ほとんどの子がまだ漢字辞典を眺めている…。)
(これはもしや…ちょっと調べ物のつもりが、何の気なしに気になった部分を読み繋いでいくうちにいつの間にかガッツリ読書になっちゃうアレだ!)
そう思った私は、担当するすべての教室で同じように、テスト終了後に漢字辞典を出してよい旨を伝え、子どもたちを観察してみました。すると最初の教室と同じような現象が起こるのです。これが家に帰ってからだとここまで没頭しないどころか、漢字辞典を開くことすらしない子もいるだろうと思うと、「鉄は熱いうちに打て」ということわざが真であることが分かります。
■後悔先に立たず、されど役に立つ
これは今までも起きていた現象ではありますが、意識してみるとかなり尊い時間であることが分かります。子ども自身の「知りたい!分かりたい!」という知的欲求が最大限に高まり、自分の手で調べ確かめることで「これだ!」という納得を得る――まるでぐっとこらえて汗を出した分だけ、水風呂と外気浴で気持ち良くなるサウナのような、“ととのう”体験がそこにありました。主体的な学びの在り方として理想的です。
もちろん、テストのような負荷をかけずとも主体的な学びができるのが一番ではあります。しかし、ここで言うサウナは私にとってのお酒やたばこのような、「多量摂取は体に毒だが、たまにたしなむ程度ならアリ」なので、子どもにとっても「分からない/悩ましい」というストレスを恒常的に浴びるのはよろしくありませんが、その先の気持ち良さを疑似体験するためにテストの場を活用することは大いにアリだと考えられるわけです。今回、私は子どもたちの姿からそう学びました。テスト終了時の「できなかった/分からなかった」の後悔が先に立つことはありませんが、役には立つわけです。