【132】忘れ物は学びの機会
教室では忘れ物をしても「なんで忘れたの!」「忘れちゃだめだよ!」と𠮟りません。忘れた後が大切だからです。忘れたことは仕方がない。忘れたからどうするのか、どうすれば次は忘れないか子ども自身で考える時間を大事にしています。今日は忘れ物をしたことで大きな学びを得たRについて紹介します。
授業中、ピシッと手を挙げいつも元気よく発表する2年生の女の子・R。この日は珍しくあさがお(書き写し教材)を忘れた。忘れた理由を聞くといつもお母さんが準備しているが、たまたまあさがおが入っていなかったそう。「どこかに入っているはず…」とカバンを何度もひっくり返し講師と一緒に探していたが、見つからず…。焦るR。どうすればいいか分からない…先生に言ったら怒られる…パニックになり涙がぽろぽろ流れてきた。少し落ち着いたRに「泣いていても分からない。忘れたらまず報告。言っても叱らないから、困っていることは伝えないと分からないよ」と話すと大きくうなずく。涙ながらに「あさがおを忘れました」と報告ができた。
続けて「どうすれば今日みたいに忘れないと思う?」と聞くと、3分ぐらいうーんと悩んでいた。突然ハッ!とアイデアを思い付き「教室行く前に、あさがおがカバンに入っているか絶対確認する!」とキリッとした凛々しい表情で教えてくれた。自分でどうすれば忘れ物をしないか決め、すっきりした様子でいつも通り授業に戻っていった。その一連をRの連絡帳に書き、お母さんにお伝えした。翌週の授業では忘れ物をしなかったR。連絡帳には「今日は張り切って一人で準備しました!絶対忘れないんだ!と何度も確認していました。」と書いてあった。言葉通り、それから約半年経つがこれまで一度も忘れ物がない。Rに「どうして忘れ物しないの?」と聞くと「だって、自分で準備しているんだもん!」と誇らしげに返ってきた。誰からも「~するんだよ」という助言が無くただただ困った経験から、自分でどうすればいいかを考え、行動することができた。
「報告ありがとう!じゃあどうする?」「その時間はどう過ごすの?」とただただ子問います。私からは何も言いません。「~したら」と言うとそれが子どもたちにとっての正解になってしまうからです。中には「どうするの?」と聞くと「分かんない」と返す子たちもいます。そうは聞かれても○○先生の求める答えが何だか分からないし、言ってもダメ!と言われてしまうのじゃないかという気持ちも分かります。「どんなにぶっ飛んだアイデアでも聞くには聞くよ。それが出来るか出来ないかはその後一緒に考えよう。ダメ元でもとりあえず言ってごらん!」と聞いてみると渋々「無理かもしれないけれど!!……もう一冊テキストがあれば貸して欲しい」と後半尻つぼみで言う子もいます。また年中さんでは「○○先生、私にすみれ(年中テキスト)を貸してくれてもいいんだよ?」と自信満々に言ったり、空のペットボトルが必要な時には「この水筒の中身、全部飲み干して使う!」と世紀の大発見をしたかのように高々に言ったりします。どんなアイデアも選択肢の1つになります。
忘れ物は子どもたちにとっての大ピンチ!だからこそ、思考が始まるきっかけ。自分で決めて自分で行動できるように、その子なりの答えが出るまでひたすら待っています。子どもたちがどんな答えを見つけるのだろうか、聞けることをわくわくしながら待っています。