【高濱コラム】『あこがれ』2019年8月


6月の日曜日、ボッチャのミニ大会を催しました。

日本ボッチャ協会のゴールドトップパートナーになるほど本気で支援しているのですが、そこには思いがあります。

多様な社会となってきているいま、障がいのある人や高齢の方との活き活きとした交流など、現代日本の課題を考えたときに、ボッチャこそが最高だなと感じているのです。

「ビルの一室などの小さなスペースでもできる」「ラスト一投まで勝負がわからないので、どんな試合も最後までドキドキ感がある」「ハンデなしで、障がいのある人と健常者が、真剣に対決できる」など、魅力だらけです。

様々なスポーツの中で、いま世の中にある課題を楽しく克服できる切り札で、子どもたちに知ってほしいナンバーワンのスポーツだと感じています。


大会は予想通りとても盛り上がりました。

おもしろかったのは、感想の言葉です。

「息子が良い球を投げるんですよ。そんなのされたら僕がしっかり投げないわけにはいかないですよね」「もう考えすぎてヘトヘトですよ。こんなに頭を使う競技とは思いませんでした。楽しかったです!」「今度はお父さんと来ようね…」。


一番最後の言葉は、上位入賞チームのすべてがお父さんが活躍した家族だったため、ある母と子が言っていた一言です。

その日はたまたま父の日だったのですが、お父さんが活躍する素敵な時間になったなと感じました。


さて、取材などで、「長年現場にいて、子どもたちって昔と比べて変わりましたか?」と聞かれることがよくあります。

私は、「子どもはいつの時代も十全に子どものままで変わりません。

家族を見つめてきて思うのは、やはりお父さんたちが変わってきたなということです」と答えます。


大きな変革の流れの入り口は「イクメン」がもてはやされたことでしょう。

私は、「僕はイクメンですよ。すごいでしょう」と妙にヒロイックに扱われることなどに若干違和感を覚えました。

もっと自然体で、妻の心に寄り添う気持ちを持つことこそが肝心なのではと考えたからです。

しかし、間違いなく流れを変えた契機ではあったと思います。


あれから10年以上経ち、いまや平日午前開催の講演会なのに、お父さんが「半休を取って来ました」ということも当たり前のようになってきましたし、夫婦で参加される方もとても増えました。

昭和の「良妻賢母感」に裏打ちされた「夫は外で仕事。家の中のことは妻の責任」という「常識」は、確実に変容しています。


しかし言い換えれば、常識が変わる時代とは、親として迷わされる時代です。

父の役割とは何でしょうか。


まず第一には、子どもの健やかな成長に焦点を当てたときに、共働き前提だとしても、肝心要は「お母さんの笑顔」であると私は信じています。

だから「わが妻をどうしたら笑顔にできるか」に注力することが大切だというのは、あちこちで書いたり言ったりしてきた通りです。


そのうえで、今日は「父の遊び」「父が仕事を楽しむ姿」の価値について書きたいと思います。


あるお父さんがいました。

建築士で自宅で設計事務所を開いて生計を立てておられました。

よく日に焼けた笑顔が印象的なアウトドア派のお父さんで、キャンプだ野球だと子どもたちとの時間をたくさん取っておられる、「父のお手本」のような素敵な方でした。


ところが病に倒れ、長女が小6、長男小2、次男年中のときに亡くなったのです。


きっと傍からはわからない苦しみ、辛さがあったのでしょうが、家族みんなで助け合い、団欒の場でお父さんの話題をたくさん出しながら、明るく過ごされていました。

中でも長女のHさんは、弟たちはもちろん、母のことも守らねばというくらいの気概を見せて、前向きに頑張っていました。


お父さんが指導してくれた野球の影響でしょう、中学ではソフトボール部に入って真っ黒になっていました。

スクールFCに通いながらも、時々私の花まるの教室に来て、勉強のわからないところを聞いたり、試験対策の取り方を相談したりしていました。

その間、背がすごく伸びて驚いたことが記憶に残っています。

成績はまずまずだったのですが、高校入試が見えてから、すごい集中力を発揮して成績を伸ばし、当初からすると「頑張ったね」と言われるほどの公立進学校に合格しました。


LINEだ音楽だテレビだと、小さな誘惑に負けて徹底できないのが、中学生の平均的な姿なのに、迷いなく目標に向かって頑張ることができていました。


お父さんのことは悲劇ではありますが、まさに「塞翁が馬」の側面があるように思います。

そのアイロン掛けしたようなピシリと伸びたフラつかない意志と行動力を見ていると、苦い経験こそが彼女を強くさせているな、父の命が確かに子どものたくましく生きる力の根源になっているなと感じました。


この春、高校に入学すると、野球部のマネージャーになりました。

弟くんの面倒を見てきた姉の経験を活かして、仲間たちのよき支えになってほしいものです。


長い花まる人生では、会員のご家庭で家族のどなたかが亡くなることを何度か経験しましたが、今回は、亡くなったのちも強い影響力を与えるお父さんを感じました。

きっと、懸命に仕事を頑張る背中を見せ、夏休みも休日もたくさん遊び、家族を本当に大切にしてきたお父さんの生き方が、見事に子どもの心の芯に宿っているのだろう、と感じました。


弟くんについての保護者面談だったのですが、どうしても上の子の話題になるのは、よくあること。

そこで知ったのですが、入学後、最初の進路希望の調査書に、彼女は「建築」と書いていたそうです。    



花まる学習会代表 高濱正伸

高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。1995年には、小学校4年生から中学3年生を対象とした進学塾「スクールFC」を設立。チラシなし、口コミだけで、母親たちが場所探しから会員集めまでしてくれる形で広がり、当初20名だった会員数は、23年目で20000人を超す。また、同会が主催する野外体験企画であるサマースクールや雪国スクールは大変好評で、延べ50000人を引率した実績がある。 各地で精力的に行っている、保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。

花まるグループとは?

花まるグループは、子どもたちを「メシが食える大人」そして「魅力的な人」に育てる学習塾です。子どもの本質を見据えた指導を行っています。

花まる学習会

年中~小学6年生の学習塾。数理的思考力、読解・作文を中心とした国語力野外体験を三本柱として、子どもの本質を見据えた指導を行っています。

花まる野外体験

花まるグル―プの野外体験は、バカンスではなく、ツアーでもない、生きる力を育むスクール。親元を離れ、初めて出会う子どもたちと大自然のなかで遊びつくします。

スクールFC

花まるグループの進学塾部門。思考力・学習法・意識改革の三本柱で、「自学ができる子」を育てます。やらされではない、子どもたちの幸せな受験を全力で応援します。

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