【高濱コラム】『親子で一緒に』2019年5月


不世出という言葉がこれほど似合う人もいないであろうイチロー選手が引退しました。

さすがの会見。

二人といない言葉の濃密さで、広く話題になっていました。

若い頃は、考えの浅い質問をした記者に気難しい反応を示して泣かせてしまう、というようなエピソードもあったくらいで、その匂いはプンプンとしていましたが、たんたんと語られる一言一言は、「ハカリは自分の中にある」「向くか向かないかというよりも、自分が好きなものを見つけてほしい」「遠回りすることでしか、本当の自分に出会えない」等々、重みのある強い言葉ばかりでした。

なるほど傑出した実績の裏に、このような思想=自分の言葉の集積があったのだなと感じました。


もともと、外を駆け回るような遊びの中に、いわゆる「地頭」を伸ばす機会が溢れていて、スポーツはその最高の機会であると、何度も語ってきた者としては、その証明を見せられているような気持ちでした。 


ただ、一般には、勉強のできる人とスポーツマンは対照的に扱われることもしばしばあります。

勉強ができないから運動で勝負、という偏見。

これはなぜ発生しているかというと、おそらく、運動神経が良いと、幼少年時代にそれだけで評価されモテるからです。

基盤の学力、特に漢字・作文などを中心とする国語力は、反復して書いたり覚えたりという泥臭い努力を必要とするのですが、安直にモテてしまうとそこが甘くなる。

「勉強とか別にできなくても」という反抗的な態度も、一部にはモテの材料だったりもして…。

国語の積み上げが無いこと・国語力の無さが、例えスポーツのプロになれたとしても、その後の長い人生のつぶしの利かなさにつながっていると観察しています。

空間・戦略・アイデアなど見えないものが「見える力」も素晴らしいし、苦しくてもあきらめずやり遂げる「詰める力」も図抜けている。

それなのに、そういう自分の頭の中で起こっているもろもろを正確に言語化し、表現する力が劣っているために、とてももったいない後半生になっていると思うのです。


それやこれやと考え抜くと、本当に最後の最後は、「何かとても大好きなもの」をしっかり持って、「国語だけはしっかりやっておく」ことだけでも、食いっぱぐれはないようにも思います。

特に好きなものがスポーツであれば、チームの仲間との感動の共有、負けた悔しさとの折り合いのつけ方、補欠になったときの心の運用など、人間力=社会の中でみんなとともに生きる力量もたっぷりつくので、あとは国語だけではと思うくらいです。


花まるグループでは、スポーツで鍛えられる「見える力」、「詰める力」に加え、「国語力」もカリキュラムに組み込んだスポーツ教育をやりたいと思っています。

この夏、その皮切りとしてサッカー教室を開校予定です。ぜひ応援をよろしくお願いいたします。


さてゴールデンウイーク。

今年は十連休。


長年見てきて、「休日をどうとらえ、どう過ごすか」については、多くのご家庭で、実は方針もあまり無く、なんとなくそのとき目についたものを選択しがちだなと思っています。

子育てという最高のやりがいも、俯瞰してみると、親として大きな影響を与えられる期間は、せいぜい小学生時代までです。

せっかくの十連休を機に、わが家の休日方針を策定してみてはどうでしょうか。


私からの提案は、「親子だからこそできること」の機会にしてみてはどうかなということです。

例えば、子どもの集中力を高める経験として、「少し危険を伴うこと」があります。

例えば刃物。

花まる学習会の野外体験では、コースによって、包丁でも斧でも触らせますが、一般に不特定多数に刃物を持たせると必ず怪我をする子が出て、中には訴訟を起こす人もいるので、学校をはじめ回避傾向にあります。

その貴重なチャンスは親くらいにしかあげられないのです。

そう難しい話ではなく、一緒に料理を作ろう、その皮むきを任せてみよう、ということで構いません。

ちなみに、二十年くらい前に、1年生でもリンゴの皮をまるまる最初から最後までちぎれずに剥ききったら報告してもらうようにしたところ、当時それができた子たちは、のちに算数系でトップクラスの力を発揮しました。


同じ意味で、火も大きなテーマです。

今、公園や校庭で火を扱えるところは稀でしょう。

しかし、火おこしにも集中力や理科的なセンスなど意義があるし、その火を成長させるべく工夫する過程が極めて意味ある時間でもあります。

また、みんなで煌煌と燃える炎を見守り語る時間は、精神にもとても良いと、ある本で読みました。

キャンプ場なり川原や海辺など安全な場所で、薪を組んでミニキャンプファイヤーをやってみるのはいかがでしょうか。


親子だからこそできることの二番目は、アクティブラーニング系に属する、対話や話し合いです。

今は、大人たちこそスマホの画面にくぎ付けになって、個人の世界に閉じてしまっている状態です。

せっかく家族みんながいるのだから、画面に子守りをさせないで、言葉と言葉のやり取りがあふれる仕掛けをしてほしいと思います。

タネはいくらでもあります。

冒頭の例にあるように国語力アップに焦点を当てて、ドライブをしながらしりとりや山手線ゲームもいいですね。

「しりとりの実力=学力」というのが私の仮説です。

三文字縛り・四文字縛り・食べられるもの・食べられないもの…、追加条件で楽しさも倍増です。

花まるの授業でやっている「たこマン」もシンプルで、発想力・想像力を伸ばすゲームです。

やり方は、子どもたちに聞いてみてください。


「最近もっとも感動したこと」というようなお題を設定して、一人ずつ3分発表をして、みんなで語り合うのもおもしろいでしょう。

親御さんの「子ども時代のエピソード」とか「青春物語」みたいな語りも、改めてやってみると、子どもたちは食い入るように聞くと思います。

普段は埋もれてしまいますが、実はすごく知りたいことですから。


他にも、「あえて失敗体験をさせる(勝ち目のない囲碁大会に出る等)」というのも、親子でその悔しさを受け止めて共感し、「乗り越え経験」をさせられるという意味で、大きな経験になるでしょう。

親子読書会、映画を観て感想を全員しっかり発表する、十日間家族の会話は英語で暮らす、親子でなかなか行かない厳しめの登山をする…。

アイデアは無限です。

休みはボケっとするというのも見識ですが、休みこそ「親子一緒だからできること」に徹底的に焦点を当ててみるのも、意義深いと思います。

よい休日をお過ごしください。    



花まる学習会代表 高濱正伸


高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。1995年には、小学校4年生から中学3年生を対象とした進学塾「スクールFC」を設立。チラシなし、口コミだけで、母親たちが場所探しから会員集めまでしてくれる形で広がり、当初20名だった会員数は、23年目で20000人を超す。また、同会が主催する野外体験企画であるサマースクールや雪国スクールは大変好評で、延べ50000人を引率した実績がある。 各地で精力的に行っている、保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。

花まるグループとは?

花まるグループは、子どもたちを「メシが食える大人」そして「魅力的な人」に育てる学習塾です。子どもの本質を見据えた指導を行っています。

花まる学習会

年中~小学6年生の学習塾。数理的思考力、読解・作文を中心とした国語力野外体験を三本柱として、子どもの本質を見据えた指導を行っています。

花まる野外体験

花まるグル―プの野外体験は、バカンスではなく、ツアーでもない、生きる力を育むスクール。親元を離れ、初めて出会う子どもたちと大自然のなかで遊びつくします。

スクールFC

花まるグループの進学塾部門。思考力・学習法・意識改革の三本柱で、「自学ができる子」を育てます。やらされではない、子どもたちの幸せな受験を全力で応援します。

Category

keyword