【高濱コラム】『触発し合う』2019年3月




News Picksの記事に、陸上競技の為末大さんと予防医学者の石川善樹さんとの対談が載っていました。

​​​​​​​談論風発、才能と才能が語り合う中で、「研究の世界で達成のために必要なのは『よい問題を見つけること』だ」とか、「人は『自分で』気がついたことであれば、ずっと探求できるけれど、『あなたの問題はこれだね』と人から言われちゃったら別物で、それはコーチングの難しさでもある」「『人生の勝負時はいつですか』、とか『自分の問題は何ですか?』ということが言語化されたら、もう人は勝手に成長して達成して幸せになれる」というような学びや発見に次々と出合えて、読み応えのある記事になっていました。


その最後の方で、石川さんの言葉としてこう書いてありました。

「いやー、これがディスカッションの醍醐味ですよね。自分でも思っていなかったことが、つい引き出されてくる」と。

本当にそうだよなと、強く膝を打ちました。


ちょうどその数日前に、「WEEKLY OCHIAI」という落合陽一さんの番組に二度目のお呼ばれをし、まったく同じことを感じたからです。

「母親をアップデートする」と銘打ち、才色兼備を具現化したようなお母さん50人に囲まれて質問に答えながらの議論だったのですが、化学反応と呼ぶべき瞬間を何度も味わいました。


例えば、「学校の音読の宿題が無意味に思える」というお母さん。

私は、ぐっと集中して精読する力は、学力にもろに比例している。

具体的な伸ばし方として『音読打率ゲーム』というのがあって、言葉の言い間違い・突っかかり・てにをはのミスなど含め、例えば50行の中で5個未満のミスの子は、最上位の力量がある。

ダラダラ読んでは意味がなく、集中した仕事のような読み方を指導しなければならない大切な時間なのだ」という趣旨の発言をしました。


すると、落合さんは、「学生を指導していても、精読できる子しか伸びない」と言いました。

論文の読み込みの緻密さと研究の実力は比例しているとのことでした。

10年以上前に書いた処女作『小3までに育てたい算数脳』(健康ジャーナル社)に書いた、思考力を構成する8つの力の一つ「精読力」が、落合さんの口からも出たことに、喜びを感じました。


また、落合さんは、

「一芸に秀でて上手くやるような話は、博士にならないと評価基準がない。それ以外は、すべて何かの合格基準があって、教える先生たちはそれを満遍なく突破する子を育てていくけれど、博士になると世の中にない価値観を一つ見つけて論文を書くと合格になる。それ以外は、外部的な評価基準があって、それを満たすと合格になるから、先生が見ている方向と、やがて社会で価値を持つものとにギャップがあるんです」

という話をしました。


圧巻は、スマホやゲームなどとどう付き合うかという話題になったときです。

私からは、こういう話をしました。


ゲームのやりすぎは、「ゲーム障害」として世界保健機構(WHO)に認定されたように、20年以上前に出会った「社会的引きこもり」になった人たちが、全員ゲーム漬けだったことを見聞してから、私は、画面ばかりが人の相手をする時間を長く持ってはいけないと考え、子どもには基本、ゲームはやるなと主張した一派である。

ただ、そういう声を受けてだろう、ゲームのコマーシャルでは、子どもでなく青年男女がやるようになったし、「仲間とやるゲーム」という謳い文句になってきたり、変遷は遂げている。

現代ではやはりスマホへの対応が喫緊の課題。

大人たちが全員中毒といってもよい状態の今、子どもに触るなというのは無理で、一定の時間触れさせるのは仕方ないかもしれない。

しかし、人工知能時代の到来でいよいよ人間力勝負と言われている中、仲間と泣いたり笑ったり共感したりするアナログの経験の時間をどう取らせるかが、親の見識であろう。


すると、聞いていた落合さんが即座に「アナログの時間が有意義になるデジタルの使い方をするのがいいと思いますよ」と答えたのです。

たとえばSNSで「展覧会をやっているよ」とあげるのも、アナログの時間。

写真を撮ってあげているのも、その対象はアナログの空間なので、アナログを強化するデジタルの使い方をしている限りは、スマホはかなりいい、と。

私が外を歩き回るポケモンGOを悪く言わなかったのも、無意識にこのことを感じていたのか、とも思いました。

それにしても、落合さんのこの瞬殺とも呼ぶべき解決の提示と、その筋の良さに、感動に近い驚きがありました。


三人寄れば文殊の知恵、という言葉に象徴されるように、一人で考えているより、知恵を集めて複数で考えた方が良いことは、間違いありません。

しかしそれは、回る頭を持っている者同士だから良いのであって、逆は、愚痴の会や、烏合の衆ということになってしまいます。

今回は天才の呼び声高い落合さんという超CPUの相手だったことで、括目し歓喜できるような瞬間を何度も味わえました。

一般に、「進学校に行った方が良い」というのは、よりレベルの高い仲間と議論し切磋琢磨できるという意味でこそ、子どもたちに言い切れるのでしょう。

私自身、これからも、触発し合える高い水準の人物に相手をしてもらえるように、自分を高め続ける努力をしなければなとも感じました。


さて、新年第一回目の講演会の朝、気分も新たに行こうと、新調したジャケットとパンツを着て出陣しました。

勢い込んで飛び出したはよいが、どうにもパンツが窮屈だ。

〔どうやら、今回はサイズを少し間違えて買ってしまったんだな。次は気をつけよう〕と感じながら会場に到着。

そこでようやく気づきました。

寝巻の上にパンツをはいてしまっていたのです。

自分を高める、は良いけれど、「外出の際に服を着るときは、まずパジャマは脱ぐ」ということが最初の目標になりそうな、年の初めとなりました。



花まる学習会代表 高濱正伸



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高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。1995年には、小学校4年生から中学3年生を対象とした進学塾「スクールFC」を設立。チラシなし、口コミだけで、母親たちが場所探しから会員集めまでしてくれる形で広がり、当初20名だった会員数は、23年目で20000人を超す。また、同会が主催する野外体験企画であるサマースクールや雪国スクールは大変好評で、延べ50000人を引率した実績がある。 各地で精力的に行っている、保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。

花まるグループとは?

花まるグループは、子どもたちを「メシが食える大人」そして「魅力的な人」に育てる学習塾です。子どもの本質を見据えた指導を行っています。

花まる学習会

年中~小学6年生の学習塾。数理的思考力、読解・作文を中心とした国語力野外体験を三本柱として、子どもの本質を見据えた指導を行っています。

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花まるグル―プの野外体験は、バカンスではなく、ツアーでもない、生きる力を育むスクール。親元を離れ、初めて出会う子どもたちと大自然のなかで遊びつくします。

スクールFC

花まるグループの進学塾部門。思考力・学習法・意識改革の三本柱で、「自学ができる子」を育てます。やらされではない、子どもたちの幸せな受験を全力で応援します。

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