【4~9歳】子どもの心に残る言葉とは

花まる教室長コラム

以前担当していたYちゃんから暑中見舞いをもらいました。かわいらしい川での飛び込みの絵とともに、そこには「この間のサマースクールで、縁の下の力持ちと言われて、MVPになりました」と書かれていました。

 

どういうところが素晴らしいのかをしっかり伝えてもらい、心に刻んだのでしょう。担当していたころのYちゃんの様子を思い返しても、「縁の下の力持ち」という言葉にふさわしい行動をしていたのだろうな、と容易に想像ができました。

 

みなさんは、幼少期に言われて嬉しかった言葉を思い出せますか?

「和(かず)に洗い物を頼むと、シンクまわりも掃除してくれるからいいんだなあ。」私の場合、それはこんな言葉です。

 

三人姉妹で、しかも自分自身が双子である私は、もまれて育ったと言えるでしょう。自分のヨーグルトには絶対名前を書いてから冷蔵庫に入れていたし(無論、油性マジックです)、 殴る蹴るのケンカだって当たり前でした。母の愛情争奪戦の日々。お手伝いは毎日やっていました。もともと片付けることは好きだったのですが、内心、姉が台所掃除をしたあとには「うーん、シンクの周りの水とか、生ゴミとかまでやらないと気持ち悪くないのかなあ」と思っていたのです。そこに、 母からのこの一言というわけです。今でも、私は台所掃除をする時にほのかなうれしさを覚えます。

 

先日教室で、ある子が、赤ちゃんのころ初めて歯磨きをしたときのことをふと思い出して、そのことをお母さんに報告したという内容の作文を書きました。お母さんは「よく覚えていたね。はみがきを嫌がっていたんだけど、どうだった?」と答えたそうです。二人の場面が浮かんでくるような、心温まる作文なのですが、注目すべきは、この子が母との会話をもれなく覚えているということです。「よく覚えていたね」 とさらっとお母さんが口にした言葉を、うれしく心にあたためていたのでしょう。だから書いたはずです。

 

子どもは、ほめられた内容を私たちが思っている以上によく覚えています。中でも、子ども自身が「ここを頑張ったぞ」と思っていることに対して図星で言葉にしてもらえたことは、強くその心に焼きつけられ、成功体験になります。あとは、自分が意識もしていなかったような部分を認められると、驚きという要素が入り、これも自己肯定の源になるようです。 そして成功体験になった行動は、意識せずとも実行し続けていけるものです。私が今も台所掃除に喜びを見出すように、Yちゃんは人のために行動することに一生懸命な子になるでしょう。的確なほめ言葉というのは、その子の行動を決めていく力を持っています。

 

サマースクールでは、俯瞰する立場にいることが多いのですが、一番近くにいるリーダーとは別に、一人ひとりの魅力を言葉にして伝えるようにしています。

 

2年生E君。秘密基地づくりで、ある班の男の子たちは弓矢づくりに燃えていました。湾曲した枝を見つけ、そこにひもを渡していきます。結んだあとにずれないようにきつく結ぶことが大事だと分かっていますが、慣れない作業に「うーんうまくできない」とみんな渋い表情。そんな中E君は器用に結んでいきます。「Eやって!」と頼まれることも。片付けで太い虎の子ロープを束ねる手さばきも見事です。その日の夕食時、Eの前でリーダーに「すごく器用なんですよ!例えば…」と伝えた時の彼は、内側から輝くような驚きをたたえていました。

 

4年生J君。体格がよくいつも笑顔。食事中目が合うと、ちょっと恥ずかしそうにご飯をかきこむ姿に愛嬌のある子だなあと思っていました。「100人鬼ごっこ」でのこと。相手のタスキを取ったら勝ちです。J君が追いかけていた子が、 途中で転んでしまいました。普通、このくらいの学年だと勝負がかかっている場面ですから、転んだすきにタスキを奪う もの。けれどもJ君は、その子が立ち上がるまで待って、それからまた追いかけていました。際立った優しさにこの子の魅力を見た思いがし、本人に伝えました。3泊4日の間、見守っていたリーダーも皆同じことを思ったようで、J君は特別賞をもらいました。びっくりしたような表情で皆の前に出た彼をさらに驚かせたのは、同じ班の下の学年の子たちからの「ぜったいJだとおもってた!」「Jならねっ!」という満場一致を示す興奮した言葉でした。

 

ほんとうにその人の心に残りいきづくほめ言葉というのは、意図されたものではなく「本音」だということでしょう。子ども同士のてらわない言葉が、J君を最も輝かせました。

竹谷 和(たけたに かず)

竹谷 和(たけたに かず)

教材開発部所属。年中から中学3年生までの幅広い学年に対しての教材開発をはじめ、各種出版にも携わる。子ども一人ひとりにあった指導法をとことん考え抜き、心に響く強い言葉を持っている。主な著書に『子どもの「書く力」は家庭で伸ばせる』(実務教育出版)がある。

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