【高濱コラム】『対話』2019年1月

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ニューメディアの旗手News Picksが主催し、今をときめく落合陽一さんが主役のWEEKLY OCHIAIという番組に出演してきました。

「父親をアップデートする」という題名で、私は講演会でいつも語っている通りの語り口で、いつも通りの内容を語っただけなのですが、所謂バズッたようで、その後あちこちで、特に大人の男性から「見ました!」と声をかけられました。


時間も限られていたので、絞り込んで話したのは、子どもの健やかな育ちのためには、共働きだろうが何だろうが「母の安心・母の笑顔」が大事だということです。


ところが、心配性で同時にイライラもしがちな若い母親を支える、近所のおばちゃん・おばあちゃん軍団がいて、地域が繋がっていた時代ははるか遠い。

ワンオペ育児という言葉の流行にも見られるように、孤独で支えられていないと感じる母親があふれる時代になった。彼女たちは子の寝顔に謝りながら、感情の起伏が激しい子育てをしてしまっている。


そこで父親の出番である。

まず認識すべきは、専業主婦中心で地域力が存在し、母が支えられていた時代は完全に終わったという事実である。

わが子の最高の成長を望むならば、「まず、妻のニコニコに専心せよ」。

そのためには、話を聞くのが上手なら聞けばよいし、いわゆるイクメンができるのならばそれもよい。

一般的には、「妻のニコニコカード」を知り尽くし、それを後押しすることが効果的です。

①仲の良いママ友とのおしゃべり、②妻の実母の近くに住む、③週一でもよいので仕事を始めてもらう、④アイドルのコンサートに行く、…などなど、それぞれにスッキリしてニコニコになれるものがある。

それを知り、「行ってきなよ」と後押しすること。

そうでなくても、「妻が幸せでありますように」と念仏のように唱えるだけでも、効果がありますよ。

思いがしみ込んで、ちょっとした行動に現れるので…。


まあ、講演会に来てくださったことがある方なら「なんだ、いつもの話じゃないか」と思われるでしょう。

その通りです。

ところが、落合陽一と佐々木紀彦という才能とともに語ったことで化学反応が起こったのでしょう、訴求力が格段に増したのでした。


おもしろかったのは、落合さんが、彼のような知的先鋭さを持った人だからこそ起こりがちな、妻への無理解とトラブルを、鋭い感性と見える目で見事に自力で回避していることでした。

ママ友との会合がいつも自宅で行われ、妻の母にはマンションの隣の部屋に引っ越してきてもらい、マネージングの仕事を奥さんに任せているということでした。

上記の①~③そのものです。

詳しく聞くと、その物言いは、一般的には妻にキレられる男ワールド語だな、と思えることもありましたが、全体を聞いていて感じたのは、「ああ、奥さんは落合さんを尊敬しているんだな」ということです。

言い換えれば「この人は私が育てる。その価値がある」という目で見てもらえているということです。

そして、妻に決定的に見捨てられない条件の一つとして、「尊敬」というのは確かにあるなと、一つまた発見した気持ちになりました。


さて、一通り大笑いして盛り上がったあとに、司会進行の佐々木さんが「要するに奥さんと対話しろってことですね」と全体をまとめたのですが、これは私にはヒットでした。

世界のいろいろな問題を考察していて、対話って本当に大事だなと考えていたからです。


例えば、少し表情が冴えないなと感じる社員がいる。

原因は、友人や恋人との関係だったり、業務に関するものだったり、家庭内の問題だったり様々です。

興味深いのは、その人物を呼び出してご飯でも食べながら小一時間対話すると、原因が何々だと特定されたというような論理的解決には至らなくても、晴れ晴れとした表情に変わることです。

対話すること自体に癒す力があるのでしょう。


また例えば、授業を良くするということについて、若手幹部たちと議論していたとき、スクールFCの仁木耕平がこう言いました。

「色々な研修をやってきたけれど、『評価』や『指導』では効果がないんですよね。講師たちの向上の意欲を維持していくのに大切なのは、『今日の授業はどうだった?』『どういう意図であれをやったの?』と、対話を楽しむことである。そしてここが完成という到達点は無く、対話をずっと継続していくことが大事なんです」と。

真剣に取り組み続けた経験のある人だけが語れる見識だし、頼もしくも感じました。


しかし、考えてみれば、現代において人と人がじっくり対話することは、珍しくなったのではないでしょうか。

家庭はテレビの空騒ぎが支配し、どこにいようが、スマホがずっと相手をしてくれる。

人の脳が、何かの画面に24時間タグ付けされたような時代です。

敢えてテレビもつけず、団らんの語らいの時間を大切にしているような意識の高い家庭も、あるにはありますが少数です。


仕事場の仲間同士、上司と部下、先生と生徒、ご近所のコミュニティ、家族…、人の世界のあらゆる場で、対話が必要になっている気がします。

画面の魅惑・魔力に引きずり込まれず、焚火を囲んでじっくり話し合うような時間を、実はみんなが求めているように感じます。

中でも、夫婦こそ、それが喫緊の課題でしょう。夫婦で対話はできていますか。


対話。

それは、お互いの違いをきちんと違いとして受け止めながら、何とか近づこうと願い心を近づける行為でしょう。

一人で生まれ、一人で死んでいく定めですが、人間は社会的な生物なので、いつも誰かにかまってもらい、わかってもらい、手を握られ、ぬくもりを感じていたい生き物です。

目と目を見てじっくり話し合う対話の時間を、絶対に必要としていると思います。


2018年が暮れようとしています。

恋愛という楽しくおめでたい時期を超え、子どもへの真剣さという共通の思いを絆として、家族愛・信頼で結ばれれば本当に幸せなことです。

新しい年、この世界に多くの対話が生まれますように。



花まる学習会代表 高濱正伸



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高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。1995年には、小学校4年生から中学3年生を対象とした進学塾「スクールFC」を設立。チラシなし、口コミだけで、母親たちが場所探しから会員集めまでしてくれる形で広がり、当初20名だった会員数は、23年目で20000人を超す。また、同会が主催する野外体験企画であるサマースクールや雪国スクールは大変好評で、延べ50000人を引率した実績がある。 各地で精力的に行っている、保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。

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