【年長・男の子】集団で学ぶ意義

花まる教室長コラム

年長男子Kくん。テキストの表紙にある「なまえ________ 」という空欄に、 自分の名前を書き始める。


「ああ~っ!『た』のつもりなのに『な』になっちゃったよ!!!」

「ね、これ(『た』を指して)、にてるでしょ?(『な』を指して)ここがにてるんだよなあ!」

感じたこと考えたことが全部口に出る。うまくいかない部分には頭をかきむしりながら、消しゴムをすごい勢いで使いながら、名前を書き上げた。思ったとおりに書きたい、その一心。 全力で書いたその7文字は、傾いたお弁当箱の中のおかずのように、

「________ 」

の中で左はじに寄っていた。講師が「とても力のこもった字だね!」と認める。


それを見ていた隣の男の子、Mくん。長男。文字への興味は幼いころから強く、ひらがなは当たり前のように書ける。夢中で名前を書くKくんを、じっと見る。


―2週間後。 頭をかきむしっていたKくんは、7文字を前よりずっと手早く、書いている。「た」も「な」も、もう「似てる」なんて言わない。文字の間隔もそろってきた。表情にゆとりがある。「でき!たっ!!」そして、Mくんはというと「○○(名前)って漢字で書けるんだ」と講師たちに披露した。 丁寧に丁寧に、すみずみまで意識して書かれた漢字。 「おお!立派な字だねー!」と言葉をかけられ、表情には自信がみなぎる。


―さらにその翌週。Mくんは「○○(苗字)を漢字で書きたい」と言った。配られたものに、自分の名前を書く。 たったこれだけと思えるものに、初めて出会う子は、全力を傾け、見つめ、そして発見する。もうできていた子は、隣の子の「初めて」を見つめる中で、「ちょっと前の自分」を見つける。そして、自分は「今」なにができるのかを確かめたくなって、だれかに見せる。一人ひとりがより思い通りに、より立派に。


子どもが望んでいるのは「自分が」「できるようになった」ことを確かに認めてもらうこと。そして、集団で学ぶということは、自分を映す鏡がたくさん与えられているということ。

竹谷 和(たけたに かず)

竹谷 和(たけたに かず)

教材開発部所属。年中から中学3年生までの幅広い学年に対しての教材開発をはじめ、各種出版にも携わる。子ども一人ひとりにあった指導法をとことん考え抜き、心に響く強い言葉を持っている。主な著書に『子どもの「書く力」は家庭で伸ばせる』(実務教育出版)がある。

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