【4~9歳】「ほめられる」・「認められる」経験が育む力とは?

花まる教室長コラム

年長クラスの授業。いくつかのピースを組み合わせて、立方体を作る課題に一心不乱に取り組む子。(…あと 3 秒、2、 1…)「できたっ!!」こちらをパッと見上げた満面の笑顔 に「やったね!とうとうできたね!」  


2年生、なぞぺー。鉛筆を走らせては止まって考え、消しゴムで消し、また書いて…(いいぞ!その調子!)「…!できた!」こちらを仰ぎ見た瞬間「見てたよ。粘ったね~!」大きな大きな花まる。


赤いハコの時期の子どもたちは、何かができたとき、近くにいる大人の表情をよく見上げます。私たち花まるの講師は、子どもたちが自分の力で考えている時間、ただぐるぐると机 の周りを動いているわけではありません。一人ひとりの表情、手元を見て「できた!」「わかった!」という輝きの瞬間に居合わせようと、常に観察しています。


「花まるはほめてくれるからうれしいと言うんです」とは、よく保護者の方から言っていただく言葉です。私たちは「ほめる」ではなく、しばしば「認める」という言い方をしてい ます。では、「ほめる/認める」ことには、どういう意味があるのでしょうか。


「できた!」と思ったその瞬間に、自分と同じことを感じてくれている人がいて「やったね!」と喜んでくれる。これは、子どもにとって「一緒に喜びを分かち合ってくれる人がいる」ということです。はじめて服のボタンをかけられたとき、一人でトイレに行けたとき、お手伝いをやりきったとき …自分の気持ちに共感してくれ、表情や態度に表してくれる 人がいるということが、その子自身の「やれた」という気持ちを、より確かなものにしてくれるのです。


私自身、小さいころ何かができるようになるたび、母だけでなくお隣のおばさんのところにまで見せに行っていたことを思い出します。「あらっ!和ちゃんすっごいね~!」驚いた表情とこの一言を浴びたいがために。子どもたちが往々にしてほめられたがるのは、無意識に、自分の気持ちをより確かにしたいと思うからです。


幼児期に、自分の喜びを分かちあってもらえる経験を豊富にしてきた子、十分共感してもらえた子というのは、成長するにしたがって、いちいち誰かにほめられたがることはなくなってきます。自分の中に、ゆるがぬ「自信」を持てるようになってくるからです。それは、だれかに見せびらかすようなものではなく、自分の中に静かに抱くもの。「誇り」といってもいいかもしれません。いちいち人に確認しなくとも「自分は自分ですばらしい」「私は大丈夫」と思えるということです。


ちょうどその過渡期にいる子と出会いました。あるサマースクールでのこと。川遊びから帰ってきた夕方、私が玄関にいると、2年生のK君が友だちと麦茶を飲みに来ました。「なあ、お前、水着にひもついてる?」と相手に聞くK君。不思議に思った私が「どうしたの?」と聞いたところ「おれ、ちょうちょう結びできるようになったんだ、今日!リーダーに教えてもらったんだ。ほら…!」と、自分の水着のひもでやってみせました。うん、見事にできています。そしてK君は、ニッコニコの笑顔でこう言いました。「お母さんにまたほめられちゃう!」彼がお母さんにたくさんほめられて=共感してもらって育ってきたことがうかがえます。母がそこにいなくても、もらえるであろう反応を想像して幸せになっている姿に、なんだかじんとしてしまいました。


たくさん共感されて育った子は、「自分はすばらしい、大丈夫」と思えるようになる。この自信は、家族という最小単位から、子どもたちが人間関係を広げていくときに、とても大事なものです。新しい環境に放り込まれると私たちは、そこにいる人との関係を築こうとします。「今この人はこう思ってるだろうな、じゃあこうしよう」などと、あれこれ考えて=共感しようとして、動きますよね。学校や職場、友人といった家族以外の様々な人と関係を持てるのは、この共感する能力あってのことなのです。


人に共感できるということは、自分と同じものを他者にも見ているということでもあります。自分自身の中に様々な感情があるように、目の前の相手もそうであると感じられるこ と。自分を誇りに思うように、目の前のこの人も、自身を誇りに思う気持ちをもっているはずだと、当たり前に思えることから、いつも人間関係はスタートしています。


先ほどのK君の話には続きがあります。彼は誰よりも元気に笑顔でチームのムードメーカーとして過ごし、そのサマースクールでMVP(とりわけ活躍した子に贈られる賞)をとりました。そのことを夏休み明けの授業で教室長に教えてくれたそうなのですが、報告の仕方は「笑顔でこっそりピースサイン」でした。なぜ「やったよ!」と大きな声で報告しなかったのかというと、同じ教室に、ある事情でサマースクールに行けなかった子がいたからだそうです。「ここでサマーのことを話したら、相手はどう感じるか」を考えられていたのです。


お母さんお父さんにお手伝いをおもいっきりほめてもらった、幼稚園の先生に三つ編みができたことを認めてもらえた、花まるの先生がすかさず頑張ったねと言ってくれた…的確に、たくさん共感された子は、自信を深められる。そして、たくさん共感された子は、同じことを人にもしてあげられるのでしょう。赤いハコの子たちは、今まさに、共感してもらう時期。きょうだいが多かったり働いていらっしゃったりで、常に子どもの「やれた!」の瞬間に居合わせるのは難しいと思います。そのかわり「どうだ!」と満面の笑みで出来たことを報告してきたら、どうぞ大げさなくらい、言葉にして、一緒に喜んであげてください。


竹谷 和(たけたに かず)

竹谷 和(たけたに かず)

教材開発部所属。年中から中学3年生までの幅広い学年に対しての教材開発をはじめ、各種出版にも携わる。子ども一人ひとりにあった指導法をとことん考え抜き、心に響く強い言葉を持っている。主な著書に『子どもの「書く力」は家庭で伸ばせる』(実務教育出版)がある。

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