【高濱コラム】『花漢の重要性』 2018年8月

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GRIT(グリット)という言葉が、少し前にビジネス界を中心に流行しました。

言葉の意味は「やり抜く力」のことで、その書名のベストセラー本で語られていたのは、一言で言えば「事を成せる人とそうでない人では、やり抜く力にこそ差がある」ということでした。

そのとき、「ん?これは私の意見ではないか?」と思ったのですが、外国の出版物だったので偶然だったようです。

実は、私が2005年に出版した「小3までに育てたい算数脳」で、その力に触れていたからです。


そこで書いたのは、数理的思考力を分析して煎じ詰めれば、「見える力」と「詰める力」という二つの力が柱ではないかということです。

前者は言い換えればイメージ力で、一言で言えば「無いものが見える力」です。

算数をベースに書いていますので、「立体の裏側」や「補助線」を、その典型として語りましたが、要は「要点」「アイデア」「相手の言いたいこと」「相手の気持ち」「本質」など、本当は見えないけれども、考える行為において非常に重要なそれらの「見えないもの」がくっきりと見えていることが重要だということです。


後者は、論理力や要約力や精読力など、ぐいと集中して詰めてやりとげる部類の思考力で、その一つが「意志力」でした。

算数の能力の話をしているのに意志力かと、驚かれた方もいたのですが、要は見えるだけではダメで、思考ステップが多い難問やタフな試行錯誤や必要条件の発見を求める問題に向き合い、解法のフローチャートや方向性が見えたところで、最後までめげたり諦めたりせずにやり抜く力が重要なのです。その有無が、トップに上り詰められるかどうかの分岐点になっているなと、大学受験生群を見て感じていたのです。


その後、『本当に頭がいい子の育て方』(ダイヤモンド社)を書いたときには、「見える力」「詰める力」に加えて、「あそぶ力」を加えました。

イメージ力と集中力だけではなく、ダメだとわかったらひょいとやめて他の方法を試すような身軽さ・柔軟性や、別解を楽しめる器・余裕、のめり込んでいる自分を冷静にモニターする俯瞰力のようなものを、その言葉で表現したのでした。

しかし、太い二本の柱は先の二つの力であるという信念は、いまだに変わりません。


ところで、その「詰める力」について、一つ発見があったので報告します。

それは偶然でした。

花まるの授業が終了したとき、随分昔の会員保護者がいらっしゃいました。

用件は、現在、家庭で個人塾をやっているので、教材のアドバイスが欲しいというものでした。それは割とすぐに終わったのですが、その数日後に会社にいらしたときに、雑談の中で、「私、花まる時代のいろいろなもの、全部残しているんですよ」とおっしゃって、連絡帳やおたより類などを見せてくださったのです。

懐かしい文章群。

特に一人ですべて回していたので(今は、副教室長が様々な仕事を手伝ってくれています)、連絡帳もすべて私が書いていた時代です。

「宿題をやりたがらないという娘に、どう対処するか」という相談に、「お母さん、ここが子育ての勝負の時です。妥協しないでください!」と言い切って、あさがお・サボテンを、毎日決まった時間にやるように、少し暑苦しい文章で主張していたのでした。「熱かったですよね」と二人で大笑いしました。


そして、毎月のおたよりにはさんでいたあるプリントを見たとき、「あっ!」と気づいたのです。それは、当時の「花まる漢字検定(現在の花まる漢字テスト)」の、特待合格の子どもの名前を列挙したプリントでした。

当時は、総会員数も少なく、特待は全学年で20名強しかいなかったので、表彰の意味を込めて一覧で掲載していたのです。


驚いたのは、その20数名の10年後の進学先です。

5年生で一人だけ特待だった男の子が東大でした(この子は中学受験はせず、6年生まで花まるでした)。

4年生はゼロ。

3年生の特待合格者二人のうち、一名は不明ですが、もう一人は東大。

2年生は10名、1年生は12名いたのですが、わかっているだけでも早・慶・東大・東北大など、錚々たる結果につながっているのでした。

特に3年以上の3名のうち2名が東大というのは、ちょっとした驚くべきデータだと思いました。


花漢(花まる漢字テスト)の、何がそういう結果と因果関係があるのか仮説を立てれば、「やるべきことを、たんたんと落ち着いた集中でこなせる力」であろうし、面倒くさくなろうが、少しも心ぶれず、範囲の学習を「やりきる力」でしょう。

そして、やれと言われたからやるのではなく、やるぞと決めてやっている「主体性」でしょうし、形式だけ何回と書くのではなく、「身についたかな」と自らを俯瞰して、本当に書けるようになるまで「詰めきれる力」でしょう。


ここで私が発見に近い再確認をしたのは、「3年生後半くらいからの花漢で特待合格を取れることは、単に漢字力にとどまらない、将来につながる大きな力が証明されているようなものだ」ということです。

もちろん、「言ってもやらないんですよ」で済ませない、保護者の厳格な態度も影響しているかもしれませんが、それも含めて花漢の中学年以降の特待合格には、将来の学力を予言するくらいの意味があると思いました。


さて、夏休みです。

花まるグループに在籍してくださっている会員保護者であれば、野外体験を中心としたさまざまな経験総量をあげることの重要性を、十分理解されているでしょうし、多くの予定を入れておられるのではないでしょうか。

我々も、サマースクールを始め、子どもたちにたくさんの機会を提供していきます。


その一方で、では夏休みにどんな学習計画を立てるかというと、案外明確な指針は持ちきれない保護者の方が多いのが現実です。

私がこの時期にこの発見をしたことは、運が良いというのか、一つの贈り物のようなものだと思います。

ぜひどうぞこれを機に「よっしゃ、夏こそ漢字を頑張ろう!」と踏み出されてはいかがでしょうか。

長々とやる必要はありません。

毎日少しずつ継続することが、一番のコツですし、親こそもう一度漢字の学習を一緒にやるというのも、双方に恵みをもたらすと思います。


事故や病気に気をつけて、豊かな夏になりますように。    



花まる学習会代表 高濱正伸



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高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。1995年には、小学校4年生から中学3年生を対象とした進学塾「スクールFC」を設立。チラシなし、口コミだけで、母親たちが場所探しから会員集めまでしてくれる形で広がり、当初20名だった会員数は、23年目で20000人を超す。また、同会が主催する野外体験企画であるサマースクールや雪国スクールは大変好評で、延べ50000人を引率した実績がある。 各地で精力的に行っている、保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。

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