【高濱コラム】『経験総量と思考力』2018年5月



3月、6年生を集めて「卒業記念講演」を行いました。
思春期の入り口にいる彼らに、外の「本音を言う大人」の一人として、人生の正解ではなく、生き抜いていくための私の信念をぶつける機会です。
感想文はHPに掲載しますが、反応は誠実で熱烈でした。
子どもの表情をしながら内面には大人の芽生えが確実にある6年生の真心あふれる感想が記されていて、こんなに真剣に聞いてくれているんだなと、読みながら涙するものもありました。


この会も始めて10年以上経つので、時代の変容や私自身の成長とともに、建て増す部分が徐々に増えてきました。
骨格としては「信頼を構築していくこと」を大きな柱として、実力のつけ方、強い心の育て方、人が集まる人間になる考え方など、生きていくための、学校では教えてくれない視点を話します。


それは概ね、毎月のコラムにまとめている内容です。
例えば「パートナー力(高濱コラム2016年10月号)」。
個人と個人の点数競争ばかりに目を奪われないで、2人で一つ(例えば恋人・夫婦・親子)とか4人で一つ(例えば家族・会社の部署など)のチームを構築するときに、愛され、必要とされる人間になれという話です。


これらのテーマに今年加わったのは、一つは「世界に出よ」ということで、これは私自身が講演でシンガポールに行った際に痛感したことです。
日本で起業し一定の成果を得たあと、早々に国外に出てどんどん成功している経営者たちと話したときに、例えば中国の国力への精通や事業のスピード感など、外で戦っている方々の感性と視野の広さを実感しました。
デジタル革命で世界は本当に狭くなったのですが、とはいえ実際に海外に行くまでの行動力には差がある。
やはり親の赴任なり青年期の留学など早い時期に国外経験がある人は、心の中の障壁が低いと感じました。
私もバックパッカーをやっていたので、それなりの経験はあるのですが、私に足りなかった部分だなとも思ったのです。
「留学は、どの国であれ、できる環境があるならばぜひ行った方がよい」と話しました。


また、人間力育成の重要性は不変だが、一方で「ものすごく尖った専門分野への知識や力量があること」は、これから武器になるということも伝えました。
「知識はスマホで調べられる時代だから、アクティブラーニングが大事」というようなことが、安直に語られますが、どんなにスマホで調べても、物理の基礎知識がないと相対性理論の理解はできない。
知識の豊富さ、とりわけ何か一つにすごく詳しくなっておくことは、生き残る道になる。


同様に、プログラミングと言っていれば商売になるような時代だし、確かにやらなければ話にならないが、これだけみんなが言い出した10年後には、当然全員がやれるくらいのスキルになっている。
しかし、プログラミングだけではなく、「プログラミング+化学の知識」とか「プログラミング+医療の知識」があると、間違いなく勝ち残れる。
つまり、依然として深く学ぶことは価値あることなのだ、と。


花まるも四半世紀の歴史を経て、26年目に入りました。
社会が大きく変わる25年でしたが、当時から今までの変化の何倍もの大変化が来ることはもう決定した未来です。
これについては、最高の知識人たちが「誰にも予想できないくらいの変化」だと声を揃えます。
そんな中、わが子をどう育てるかは、まさに親の判断力が問われます。


言い切れるのは、「経験総量が豊かであること」と「数理的思考力を高めておくこと」は価値だということです。
そして、「家庭の温かい雰囲気」が子を伸ばすためにとても重要な基礎だということ。
なかんずく(共働きだろうがなんだろうが)「母の笑顔」がその核心だということです。


花まるは、思考力と人間関係力の礎として、サマースクールを始めとする野外体験を、さらに発展させていきます。
また「なぞぺー」「Think! Think!」で世界に認められた数理的思考力育成についても、さらに進化させていきます。
そして、子どものためにこそ、保護者・家庭が良い雰囲気であることへの働きかけに、力を注いでいきたいと思います。


お母さんの笑顔について、おもしろいエピソードがあったので紹介します。
特にお父さんたちに読んでいただきたい内容です。
正月早々に、息子が食中毒由来の熱発になりました。
原因は検査のあとしばらくしてわかったのですが、熱が高くなったり下がったりを繰り返し、困りました。
運悪く私は連日講演会、しかも遠方が多く、一週間まったく力になれない状態で、妻が一人きりですべての面倒を見ていました。
そしてようやく熱も下がった8日目、私が帰宅するとさすがにプンプンイライラした危険な妻がいました。
まずいなと思いつつ会話をしていたのですが、やはりトゲがあります。
そのうち妻が「私疲れたから、一泊くらいお泊りでもしてこようかな」と言い出したので、私は「行って行って!」と言いました。
妻が「何それ」と聞くので、私は「Y(妻の名)が、その状態のときは、もう爆発寸前だもん」と答えました。
すると妻は「そうだよね、私この状態まずいよね」とニッコニコになったのです。
さあ、お父さん、これをなんと解きますか?


あくまで後付けの説明ですが、要は、その言葉の奥に「君のことをよく知っているよ」「よく見ているよ」「心配なんだよ」という「思い」が伝わったからだと思います。
つまり、一週間看病し続けた労働の大変さがイライラの原因ではなく、その間わかってもらえる人がいなかったことがポイントだということです。
これは、「母の笑顔」に夫として集中するときに、とても大事な視点だと思います。
「たまたま当たったクリーンヒット」ですが、参考になれば幸いです。


花まるは、今年度も、家族の幸せを応援します。



花まる学習会代表 高濱正伸


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高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。1995年には、小学校4年生から中学3年生を対象とした進学塾「スクールFC」を設立。チラシなし、口コミだけで、母親たちが場所探しから会員集めまでしてくれる形で広がり、当初20名だった会員数は、23年目で20000人を超す。また、同会が主催する野外体験企画であるサマースクールや雪国スクールは大変好評で、延べ50000人を引率した実績がある。 各地で精力的に行っている、保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。

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