【高濱コラム】『一緒だから』2018年2月

年末に、故郷に帰りました。

母は大分前に認知症になり施設に入っていますし、父は長年開いていた医院をたたんで入院中。

両親の世話と医院の後処理のために帰ったのです。

衰えていく親を見るのは正直胸が弾むものではないですし、たんたんとやるべきことをこなすために帰ったのですが、一つだけ楽しみがありました。

それは、九州自動車道の宮原サービスエリアで、「いきなり団子」を食べることです。


「高濱先生と行く修学旅行」で、40人の子どもたちと熊本を旅したのは、8月でした。

草千里に阿蘇の自然の雄大さを感じつつ、夜は、熊本地震のときに長期にわたって避難所となっていた「阿蘇ファームランド」のドームに宿泊。

二日目には、県内で一番被害が大きかった益城町の体育館を訪れました。

そこをホームに活動するプロバスケットボールチーム「熊本ヴォルターズ」のプレーを間近で観戦させてもらったあと、選手たちから被災後は練習がまったくできず、炊き出しなどの救援活動に明け暮れた日々のお話も聞きました。

最後は熊本城へ。

再建中ではありましたが、崩壊した石垣の様子に、絶句…。

熊本城の真横にある加藤神社の宮司さんは、瓦を落としながら大きく揺れ続ける天守閣を見守るしかなかったときの気持ちなどを話してくださいました。


真剣なテーマに直面したあとは、遊ぶに限ります。

湧き水の池に木製の外枠をこしらえた「嘉島町湧水公園天然プール」へ。

潜ると泳ぐ魚が見えるプールはなかなかないでしょう。

飛び込んだり落としあいをしたりして大いに楽しんでいたのですが、地元の中学生にからまれたのは、ちょっとしたスパイスが効いた経験になりました。

もちろん、私は屁とも思いませんし、最後は仲良く落としあいをしたのですが、何も悪いことをしていないのに、ミニヤンキーに方言で喚き散らされるのは、子どもたちにとってはほろ苦い経験だったでしょう。


一路高速で、私の地元人吉へ。

その途中に、宮原サービスエリアはありました。

私はもともとここのいきなり団子が特別においしいことは知っていたのですが、みんなで一個ずつ食べたら、もう大騒ぎ。

「うっめー!」

「おいしい!」

の声が花火のように上がりました。

あの興奮状態は忘れられません。

夜は夜で、星を見ながら歌ったり、流れ星をみんなで見ながら人生について真剣に語り合ったりしました。


3日目は、花まるグループが誇る「社会の達人」こと狩野崇による「ブラ狩野」。

青井阿蘇神社から人吉城まで、散歩しながら歴史のレクチャーです。

特に人吉城では、「今から本丸まで攻め上っていく敵の気持ちになって入っていくぞ」という声に、子どもたちの目は輝きました。

攻める気持ちになると石垣がカクカクと折れた形になっている真の理由が良くわかるのでした。


午後は、日本三急流の球磨川の支流、万江川で川遊び。

私の小中学校の先輩で川遊び名人のおじさんが、小学生向けの網を選んで準備してくれたおかげで小魚がたくさんとれました。

流されて遊ぶ子たち、高いところから飛び込む子たち。美しい光景でした。


しっかりした子が多く、チームワークも抜群でした。

最後の夜、遅くに見回りに行くと、男子部屋では24人全員が布団を敷き詰めた大広間の真ん中で、おでこをくっつける形で集まってヒソヒソ話をしています。

内容は教えてくれませんでしたが、「大人の話」ということでした。


いよいよ最終日の4日目。

大きな鍾乳洞を見学して、熊本方面に向かう高速に乗ったときでした。

バスレクで「この4日間の経験を踏まえた替え歌」を作ってみようというお題を出したところ、こんなにも多くの経験をしたのに、ほとんどの班が、「いきなり団子をもう一度食べたい」というテーマの詩を作っていたのです。

その想いは切実で、私の心を動かすには十分でした。


宮原サービスエリアで再び購入し、みんなで1個ずつ頬張りました。

もちろん子どもたちはハイになっていたのですが、私こそ、せがまれる喜び、買ってあげる喜び、花畑のように笑顔がたくさん輝く空間にいられる喜びに包まれて、幸せの極致でした。

私自身も一個食べたのですが、祭りの感動も相まって、こんなにおいしいのは今まで味わったことがない、と感じました。


その、「夏の思い出」のいきなり団子を食べに、いよいよ宮原サービスエリアに入りました。

ところが、食べてみると…。

あの絶妙な味ではなくなっていました。

「普通においしい」と若者なら言うような水準。

あれ?と考えて、すぐに答えはわかりました。

子どもたちと一緒にいたからこそ、何倍もおいしく感じられたのです。


「一人ではなく、みんなで一緒に食べるからおいしい」

「みんなで一緒にやるから楽しい」。

これは誰しもしばしば感じる真実ではないでしょうか。

子どもがいると、お世話に翻弄される面もありますが、やはりそこにいてくれるだけでも幸せで、時が過ぎ、わが子が自立して外に出ていくと、家族みんなで食べたときほどご飯をおいしく感じなくなったという話はよく聞きます。


塾なども、あくまで個人戦にこだわって、自分ひとりで授業を行っている方もいるし、それはそれで一つの道ですが、私はやはり「一緒だから楽しい」派。

例えば、サマースクールの下見一つでも、若い仲間たちと冗談を言いながら行くことに無上の幸せを感じるのです。

だからこそ、これからも力を合わせる仕事の仕方を貫きたいと思います。


さて、花まる学習会は、2月2日に25歳の誕生日を迎えます。

開催を受け入れてくださった幼稚園の園長先生方をはじめ、関わってくださった多くの方々のおかげです。

本当にありがとうございました。

25年と数字にしてみるとずいぶん長いように感じますが、必死に取り組んでいたらあっという間で、浦島太郎のように一瞬で時間が過ぎたような気もします。

10周年でも20周年でもイベントを行ったのですが、今回は四半世紀の区切りのとき。

「お母さんたちは、何を一番喜んでくれるかな」と考えて、講演料を無料にすることにしました。

生徒集めから開催場所探しまでお母さんたちがやってくれる。

花まるは、間違いなく、そんな一人ひとりの保護者の方に支えられてここまで来ました。

その感謝を伝えたい方々には、講演会が一番喜んでもらえるのではないかと考えたのです。


会員とその保護者の方が所属する幼稚園、保育園、小・中学校、PTA連合会などが主催の講演会ならば、4月から一年間、講演料をすべて無料にいたします。

詳細は、2月に花まる学習会と講演会のHPでお知らせする予定です。

ぜひ多くのお申し込みをいただければ幸いです。

本年も、よろしくお願いいたします。

(※本コラムは、『花まるだより2月号』(会員向け・1月末配付)に掲載したものです)


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高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。1995年には、小学校4年生から中学3年生を対象とした進学塾「スクールFC」を設立。チラシなし、口コミだけで、母親たちが場所探しから会員集めまでしてくれる形で広がり、当初20名だった会員数は、23年目で20000人を超す。また、同会が主催する野外体験企画であるサマースクールや雪国スクールは大変好評で、延べ50000人を引率した実績がある。 各地で精力的に行っている、保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。

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