【音の森コラム】最高の音楽教育とは

「花まるメソッド音の森」(花まるグループの音楽教育部門)の会員数が 300 人を突破しました。

音の森の開校から2 年が経ち、3 年目のスタートとして、花まるグループ代表の高濱からは「順調すぎる船出」という言葉をもらいました。

多くの音楽教室が閉校を迎えている時代の中で、自分たちが信じた道が形となり広がっていくことほど嬉しいことはありません。


生徒数の増加に合わせてレッスン室の増設をすることになり、それに伴ってアプリ製作部員の一部が新事務所へ移転することになりました。

そして現在、教材開発に携わる人は 25 人にのぼります。

なぜそこまで人員が必要かというと、まだまだ走りながらの運営であり教材も基本的には 2 カ月先のものをつくっているからです。

子どもたちの成長スピードを把握しながら PDCA を回すという意味では、2 カ月という単位が適度な期間でもあります。

現場の指導者と教材開発製作者が別々に運営している音楽教室や塾というのも多いですが、スタッフ全員が現場を持ち、次の週にはフィードバックを取り入れるというのは花まる学習会に学んだ素晴らしい仕組みです。


新事務所の準備をすべく古い資料を整理していると、音の森を立ち上げた時の資料が出てきました。

それは恥ずかしいぐらい稚拙な手書きでの「ふーが」(読譜教材)や、構想段階の「音なぞ」(音楽理論 & ソルフェージュ教材)。

今でこそどこにもないオリジナルの教材ですが、当時は誰もパソコンを使えず、ほとんど手書きで作成していました。

外国民謡の教材「ぽるか」と教会音楽の教材「きりえ」。

教材開発部の坂村はこれらの教材を作るために大学院と合わせて教会音楽学校に入学し、そこで修行を積みました。

その後ヨーロッパを横断し、酒場や図書館などで、街に根付く民謡の収集をしていったのです。

実際にぽるかのデータと言うのはネットで調べてもほとんど出てこないと言ってもいいほど、日本には情報がないものばかりです。


最高の音楽教育とは。

最高の音楽教材とは。

資料を精査し、議論をする夢のような時間だけで1年が経ち、一向に音楽教室開講までこぎつけることができませんでした。

2012 年、構想を高濱に伝えたとき、「半年後に授業をやってもいいよ」と言われたものの、進めれば進めるほど教材は甘くないと痛感させられました。


開講するまでは外にあるプロジェクトという位置づけでした。

ですから当然無給。

アルバイト代を支払うどころか、この音の森を創設するプロジェクトに参加するには月1万円を支払うのがルールでした。

お金を自ら払い、開発ソフトを購入して膨大な作業量をこなす。

それだけコストを払ってまで続けてきたモチベーションの源は、見えていた未来の大きさと、自分たちの信念に価値があると感じていたことです。

当然、形になりっこないと辞めていった人もいましたが、ほとんどの人が残り3 年で開校するにはできすぎなぐらい、素晴らしい準備ができたと自負しています。

結局残ったメンバーは次々に社員となり、今も後輩として、そして盟友として働いてくれています。

教材が授業の要である一方、現場で目の前の生徒と向き合うことこそが幸せであり、そして甘くない瞬間瞬間の勝負です。


先週もレッスンでこんなことがありました。

年長、Mくん。

「今日はチェロ弾かない」

と言い出しました。

「なんで弾かないの?」

そう尋ねると、

「弾きたくないから」


「お家での練習はどう?」

「ん~。ふつう」

こんな会話が続きました。


私はレッスン前に「一週間どうでしたか?」とMくんのお母さんに尋ね、「嫌がってほとんど練習しませんでした」と聞いていました。

ですから練習を嫌いと言ってもいいのに、私に気を使ったのか、やせ我慢をしたのか、どちらにせよその子を褒めてあげられる一面を見た瞬間でした。

結局その日はその子を膝の上に乗せ、抱えながら一緒にリズム打ちから始めていきました。

普段なら 1 分で終わる教材ですが、競争したり、ポイント制にしたり、ゲーム性を取り入れながら進めることで、15 分も取り組んでしまいました。

そのうち気分がよくなったのか、「チェロを弾く!」と言って、楽器を手にしたのです。


音階をやって、リズム打ちをやって、フォーム確認して、課題曲を満遍なくやることが上達への近道です。

ですから、いわゆるついつい「ちゃんと」やらせるという方に気持ちが傾きます。

その昔、個人で教えていた私は、生徒に「やりたくない」と言われると「やりたくないなら今日はやめる?」と、ポジティブな気持ちに傾くわけもない言葉を、常套句のように使っていました。

今でもどんな声かけが適切かを意識した瞬間に言葉が詰まることがあります。

しかし、その都度どのように伝えればその子に響くのか、立ち止まり考えます。


間違いなく言えることは、「やらせる」ということがいかに簡単なことか。

「やらせる」より「やりたい」、そう思ってもらえるようにと、そこを見据えた時、自然と言葉選びも変わってきます。

そして「やらされ感」を脱却し、好きだから「やりたい」へ。

そして高学年になれば「やることへの哲学」まで導くのが指導だと思っています。

先述の年長レッスンでは、学習意欲にフォーカスしたことが功を奏しました。

手がかかる子ほどかわいいのですが、自分の力量を試されている状況で、最終的に自ら楽器を手に取ってくれた時は本当にうれしかったです。

学習意欲にフォーカスし、技術も身に付ける。これは音楽教室でもレッスンでも、音の森の教育メソッドの支柱となります。

子どもの学習意欲を育んでいくために。

ご両親とともに、二人三脚で歩んでいきたいものです。



花まるメソッド音の森代表 笹森 壮大


【花まるメソッド音の森とは?】


2014年に開校した「花まるメソッド音の森」。音楽理論、ソルフェージュ、海外の民謡、教会音楽、読譜、記譜、作曲を1時間半の授業の中で学ぶ年中・年長~小学生の集団授業と、独自のメソッドに基づいた一対一のレッスンの二つを柱に備えた音楽教室です。

単に音楽が好き、楽しいというだけにとどまらず、人を幸せにする感性を育て、生きるための能力を高める。つまり「人を幸せにできる大人」を育てるということが「音の森」の教育理念です。

花まる学習会の「メシが食える大人」を育てるという教育理念と同じく、社会に出た後のことを見据えています。

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【おすすめ書籍】

🌼『感性と知性を育てる音楽教育革命!』




笹森 壮大(ささもり そうた)

笹森 壮大(ささもり そうた)

1988 年東京生まれ。3 歳よりチェロを始める。 桐朋学園女子高等学校音楽科を経て桐朋学園大学音楽学部に入学し、2008年よりフランスへ留学。 チェロを臼井洋治、倉田澄子、M・ミローネの各氏に師事。 帰国後、TV、ラジオ、舞台など様々な分野で活動を広げる。 幼児から大学生までを対象にチェロやオーケストラの指導を行う中で、 音楽教育の現状に問題意識を抱く。 2014年、花まる学習会にて、音楽教育部門「音の森」を立ち上げる。 「音楽を通して人を幸せにできる人」の育成を目指す。

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