【松島コラム】『学校歴から学習歴へ』 2018年1月

2020年度から始まる大学入試の試行調査(プレテスト)が11月13日、全国約1900校の高校で実施されました。


以前にもこのコラムで触れましたが、今回の大学入試改革は高大接続改革の一環として行われます。

大学の役割は、分数ができない大学生の学び直しの場ではなく、社会で通用するための教養や経験を積ませることであり、技術の開発、研究を進める場所でなければなりません。


グローバル化において日本の大学は世界の中で遅れをとっていると言われています。

イギリスの教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が公表した「世界大学ランキング2018」では、東京大学は過去最低の46位となりました。

もちろん評価項目が日本の大学にそぐわないという見方もありますが、研究開発費や人材の多様性など様々な面において、世界との差があることも事実です。

そして、こうしたことがひいては国際競争力の差となってくることが懸念されているわけです。


そこで文科省は2017年4月から、以下の3つの方針について、一貫性のあるものを策定し公表することを、すべての大学に義務付けました。


  1. ディプロマ・ポリシー:どのような力を身につけた者に卒業の認定や学位の授与をするのか、その基本方針を定めたもの
  2. カリキュラム・ポリシー:1を達成するためにどのような教育課程の編成をするのか、教育内容の実施をするのか、またその成果をどのように評価するのかを定めたもの
  3. アドミッション・ポリシー:1、2を踏まえたうえで、どのような入学者を受け入れるのかという基本方針であり、入学者に求める学習成果を示すもの

大学でどんな学びができるのか、その結果どんな力が身につくのか、そしてどんな学生に来てほしいのかを具体的に示すことは、受験生にとっても大学で何を学びたいのか、どの大学を選ぶのかなどの指針となり、入学後に起きる大学と学生とのミスマッチを減らすことにもつながります。

さらに学生を採用する企業側にとっても、一部の学歴フィルターと言われるような入り口の偏差値や知名度に頼った採用から、「あなたは大学で何を学んできましたか」「入社してあなたは何ができますか」という学習歴を重視する人物評価の採用にシフトしていくことが可能になるのです。


こうした動きの中、注目したい大学が岡山にあります。

開学10年目を迎えたIPU環太平洋大学です。

あるご縁からこの大学のことを知り、訪問する機会をいただきました。

この大学の特色の一つは、企業実習や海外学習などの「実学教育」を重視し、社会で活躍できる人材になるための様々な教育プログラムを行っていることです。

実際に、「どこにもない大学」「4年後に責任を持つ大学」という理事長や学長の熱い思いにこたえるかのように、卒業生の活躍はすばらしいものがあります。

しかし現地に行って何よりも感動したのは、在学生の礼儀正しさでした。

社会人としての基本動作である「相手の眼を見て話を聴く」「しっかりと挨拶をする」ということが徹底されていたのです。

初めて会う人にも気持ちの良い挨拶ができるということは基本のキです。

こうした規律を重んじる指導ができるのは、教職員が一人ひとりの学生としっかり向き合って接しているからです。

そこには決して厳しい上下の関係ではなく、むしろあたたかく、互いに学び合いながら一つの大学をつくっていこうとする一体感がありました。

地方の歴史の浅い私立大学は、これまでの偏差値という物差しでは、なかなか正当に評価されにくいという現実があります。

しかしそこには表れない将来性をこの大学には感じました。


今後各大学における個別入試では、アドミッション・ポリシーに基づいた様々な形での選抜方法がとられるようになっていきます。

学力はもとより「高校までにどんなことに興味・関心を持ち、どんな活動をしてきたのか」ということがこれまで以上に重視される可能性もあります。

それは、どの学齢期においても受け身ではなく目的をもって主体的に学ぼうとする姿勢が求められることでもあります。

逆に言えば、今後は、そうした主体性を育んでくれる教育システムや学習環境が整った学校に人気が集まり、学校側も明確な教育方針や特色を打ち出していかないと、少子化が進む中で生き残ることが難しくなるかもしれません。

一方、受験する側は学校の名前や偏差値だけで選ぶのではなく、将来に向けて自らの学習歴や強みをどう生かし伸ばしていくのか、そうした視点での学校選びこそが大切になっていきます。

実際に中学受験の世界でも、2020年に向けて学校改革に積極的に取り組んでいる学校は増えていますし、保護者の方の受験に対する考え方にも変化が出てきていると感じています。


今回の大学入試改革によって、日本の受験システムが100メートル走を全員で走るような一種目全員参加型から、それぞれの得意技を生かせる多種目個人参加型に変わっていくなら、受験そのものが、自らの特性を知り、深め、磨いていくための真の成長の機会となり、その過程で得られる豊かな経験知、多様な学習歴こそが、新時代のエリートの条件になっていくのではないでしょうか。

 
さて、年が明ければ入試が本格的に始まります。受験生そして皆様にとって、2018年がすばらしい一年になりますことを祈念し、今年最後のコラムとさせていただきます。

※本コラムは、『FCだより1月号』(会員向け・12月末配付)に掲載したものです


スクールFC代表 松島伸浩



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松島 伸浩(まつしま のぶひろ)

松島 伸浩(まつしま のぶひろ)

1963年生まれ、群馬県みどり市出身。現在、スクールFC代表兼花まるグループ常務取締役。教員一家に育つも、私教育の世界に飛び込み、大手進学塾で経営幹部として活躍。36歳で自塾を立ち上げ、個人、組織の両面から、「社会に出てから必要とされる『生きる力』を受験学習を通して鍛える方法はないか」を模索する。その後、花まる学習会創立時からの旧知であった高濱正伸と再会し、花まるグループに入社。教務部長、事業部長を経て現職。のべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績は、保護者からの絶大な支持を得ている。現在も花まる学習会やスクールFCの現場で活躍中である。

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