【高濱コラム】『ともに成長する』2018年1月


 学歴に関係なく、社会に出てから大活躍している人が、どんな育ちをして誰と出会って何を学んできたのか。

これを知りたくて、最近、各分野で傑出した多くの方々に、雑誌の連載などでインタビューをしています。


 彼らにはいくつか共通することがあります。

一つ目は「母の愛への信頼」。

心の中のお母さんが人一倍大きい感じとでもいうのでしょうか、愛されているに決まっているではないかという強い自信。

お母さんの話題になったとたんに綻ぶ、表情や瞳の輝きでわかります。


 二つ目は「没頭体験」。

言わずと知れた「外遊び」が圧倒的に多く、真っ暗になるまで山や川や野原で遊んでいたことを嬉しそうに語ってくれます。

その他にも、スイミングやサッカー・囲碁・ピアノなどのお稽古事にのめり込んだ経験をあげる人もいます。

何かをやり始めると周りの声が聞こえなかったということも共通項です。

この集中の体験が、その後の勉強にせよ部活にせよ、何事にも「やるなら集中」という行動原理につながっているように感じます。  

 

 これらは、長年講演会で語ってきたことでもあり、再確認したことなのですが、三つ目は「へえ、そこか」と思うことでした。

それは「読書」です。

本を読むことが、語彙力や読解力などいろいろな意味で重要ということはわかっているつもりでしたが、もっともっと深い意義が隠れていそうだなと気づかされたのです。

 

 世界を飛び回り活躍されているある女性は、「本は食事と同じくらい大事」と考える両親に育てられ、ある本があまりにおもしろすぎて気づいたら朝になっていたという体験を、小学生のときにしたそうです。

また、世界的なIT企業で活躍している男性は、小さい頃は多動系で、外で走り回っていたが、中学生くらいから乱読の読書時代があったと語りました。

不良の時代を乗り越えて起業し、上場までさせた別の男性の両親は、基本は放任主義だったが「本だけはいくらでも買ってやる」という方だったそうです。

このタイプには複数出会いました。外資・国内を問わず大企業のリーダーとして引き抜かれ続けている女性(いわゆるバリキャリ)も、父親が本屋からカタログのようなものを持ってきて、「〇をつけた本はすべて買ってあげる」という育てられ方をしたと語りました。

同じように、本は本屋くらいたくさんあったとか、家族みんなでテレビを消して読書をする時間があったという方もいました。

 

 バンとそのものを映し出すテレビと違って、文字からイメージを豊かに膨らませることが大切なのか、他人の人生になりきって想像することなのか、様々な世界を知っておくことが幅になるのか…。

どうやら、一般的に本が大事と思われている以上に、人生のある時期に読書にのめり込むことが大きな人間力につながることは確かなようです。 

 

 さて話は変わりますが、ラグビー全日本チームの中で仕事をしていた方に、興味深いことを聞きました。

私がインタビューされる側だったのですが、その中で、私がこういう話をしました。

 

 随分前に取ったデータだが、縦軸に中学生の学力の総合成績、横軸に親の生活習慣を取る。

例えば「子どもの頃を思い出してください。あなたの両親は、わからない言葉があったらすぐ調べる人でしたか」というように。

右端の「とても良く調べていた」から左に行くにしたがって「よく調べていた」「まあ調べていた」「あまり調べなかった」「ほとんど調べなかった」「全然調べなかった」「辞書そのものが無かった」という感じで項目が並んでいる。

子どもたちの答えと成績を点描してみると、例外的な子もいなくはないけれど、まあ見事に右肩上がりのグラフなった。

つまり、どんな塾に行くかとか、どんなドリルをやるかということ以上に、「親が知らない言葉をすぐに調べる」というような行動習慣こそが、子どもに大きな影響を与えたということである。

 

 すると、話の途中で彼の目が輝き始め、終わるやいなや、こう切り出されました。

「いやあ、おもしろい!実は、スポーツ界全体として『コーチのあり方』が、変わってきているんですよ。

これまでは、走りなり球の扱いなりの「豊富な専門知識」があることがコーチの必要条件であり、教えたり激励したりという選手への働きかけが、コーチの仕事でした。

ところが、科学的な検証などによって、『コーチの生き方や態度』が、選手へより良い影響を与えることがわかってきたんです。

例えば『コーチ自身が学び続けていること』とか『質問されてわからないことはわからないと言える正直さ』などです」と。

 

 すこぶるおもしろい話です。誰かに良い影響を与えたければ、まず自分の行動を良くすることを考えよ、ということ。

この点で連想することはたくさんあります。

 

 例えば、前述の成功者インタビューにも一定の割合でいたのが、「頑張っていた親」を語る方々です。

ある人は「共働きの母だったが、仕事を真剣にしている姿が大好きで誇らしかった」と言っていました。

そんなに忙しいのに、走って帰って来る足音を聞くと、私は愛されているなと感じたともおっしゃっていました。

 

 私も、戦後の貧しい時代に中卒で准看の資格を取って看護師となり、医師の父と結婚した母が、高校卒業の資格を取るために、家事の合間や、スクーリングのために熊本市に向かう汽車の中でひたすらテキストをにらんで勉強している姿を見て、勉強って大事なんだなと浸み込んだ記憶があります。

 

 また、私が師と仰ぐ幼児教育の大家は、良い先生とは「成長し続ける人」だとよくおっしゃっていました。

20年前はわかった気になっていましたが、いま一定の経験をして思い返すと、煎じ詰めた濃厚な真理を教えてくださったのだとわかります。

 

 今年も終わります。オリオン座の南中を見上げながら、「また太陽の周りを一周できた」と一年を振り返る季節。私自身は、今年ほど「生き延びた」と感じたこともありませんでした。生きていられること、素晴らしき世界に感謝をしながら、年を越すことにします。

 

 読書を友とし、日々見識を深め、気づき、学び、感動して、成長し続ける大人でありたいですね。良いお年を。

 

花まる学習会代表 高濱正伸


(※本コラムは、『花まるだより1月号』(会員向け・12月末配付)に掲載したものです)

 

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高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

高濱 正伸(たかはま まさのぶ)

花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。1995年には、小学校4年生から中学3年生を対象とした進学塾「スクールFC」を設立。チラシなし、口コミだけで、母親たちが場所探しから会員集めまでしてくれる形で広がり、当初20名だった会員数は、23年目で20000人を超す。また、同会が主催する野外体験企画であるサマースクールや雪国スクールは大変好評で、延べ50000人を引率した実績がある。 各地で精力的に行っている、保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。

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