【Rinコラム】『大切にしているもの』2017年5月

 縁あって0~2歳児の親子たちと接する機会がありました。

どっぷりと彼らの生きている世界に入り込んでみて気がついたこと。

それは、彼らはノンバーバルの世界に生きているが、感情も意思もある、一個の人間である、ということでした。

至極当たり前のことなのですが、我々大人がそのことを忘れたときに、いろいろな問題が起こるのだということに、改めていきついたのです。


 「何やってるの?早く行くよ」「それはそうやって遊ぶおもちゃじゃないよ」「ダメ、それは触らないで」…。

もしかしたら、対等に承認されるということが、彼らにとっては珍しいことなのかもしれない、と。


 言葉を話さない時代の幼児と、私がしたこと。

それは、よく「観察」し、「感じたことを言葉にする」ということでした。

泣いている子に、「びっくりしたね」「取られたと思ったんだね」、「靴を履きたかったんだね」「こっちも開けたいんだね」「それがほしかったんだね」ひっくり返ってしまったおもちゃを前にフリーズする子に、「おもしろいことになったね」「見せてくれようとしたんだね」「見つかってよかったね」…。


 一個の人間として対等にあろうとすること。

それは創作や学習を通して子どもたちと関わるときに、私が大切にしていることそのものです。


 「言葉を使わない会話」とは、「表現された何か」と同じです。

いつでも目の前には「即興アート」が繰り広げられている時代。

ことばを使う私たちと、ことばを使わない表現者である彼らをつなぐもの。


 よく観察をすることができるということは、相手を知ろう、わかろうとすることと同義です。

それは目の前にいる人を、見なりや肩書で判断するのではなく、その本質を見抜こうとする姿勢であり、そのことこそが、人として最も豊かな生き方に通じるはずなのです。


 「あなたはどうしたいの?」「どう考えて、何を感じているの?」ということをちゃんと知りたいし、尊重したい。

コミュニケーションに大切なのは、実はそのことだけなのかもしれません。
 

井岡 由実(Rin)



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【ARTのとびら とは?】


2001年、花まる学習会がまだ小さな塾だったころ、教室で教える傍ら、児童精神科医の故稲垣卓先生とともに、不登校の子どもたちとその家族を支援する相談室Saliを立ち上げました。

家族でのカウンセリングのほか、絵画療法、遊戯療法、箱庭などを用いて子どもたちとセッションを続けます。

ただ聴くだけでなく、一緒に何かを作りながら、内なる対話を通して、子どもたちは疑似的に心の葛藤を体現していきました。描いたり創ったりすることが、彼らの内面を表現することを手助けし、確実に何かを浄化し続けているのだと気がついたのは、このときです。

「Atelier for KIDs」は、そんな想いから出発した、創作を通して自分を表現する、子どもたちに計り知れないパワーを与える創作ワークショップです。

RELLO 由実(Rin)

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Rin 井岡 由実(いおか ゆみ)

Rin 井岡 由実(いおか ゆみ)

2004年、花まる学習会取締役に就任。 2007年文京区根津にHanamaru Groupの芸術メセナとしてGallery OkarinaBを立ち上げ、同時に本格的な芸術活動をスタートする。 ロンドン、ベルリン、シンガポールなど海外で展示や、親子のための音楽(KARINBA)、語りのライブパフォーマンス(Rin-Bun)など、幼児教育とアートの交わるところを世の中に提示し続けている。 2009年~月1回子どもたちのための創作ワークショップ「Atelier for KIDs」をGallery OkarinaBにて開催。ワークショップ教室に参加する子どもたちや保護者から「りん先生」として親しまれている。 著書に「国語なぞぺ〜」(草思社) 高濱正伸/共著・他がある。 【ARTのとびら公式サイト】http://www.hanamarugroup.jp/art-edu/news.php

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